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感じる経済学
加谷 珪一
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知識・教養
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経済社会
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コンビニコーヒーとドーナツ

企業は利益を上げることを目的に日々活動を行っております。市場の変化に合わせた新しい商品やサービスを投入し、消費者はその中から最も魅力的なものを選んでお金を消費していきます。

経済活動において、成功と失敗の分岐点はどこにあるのか。コンビニエンスストア(以下コンビニ)での、明暗を分けた経済活動について紹介していきましょう。

コンビニは市場規模が非常に大きいです。中でも、コンビニコーヒーは、大きなマーケットの形成を実現できました。1杯100円からなるコーヒーは、日常的な購入体験を作り出し、付随する商品の購入にもつながっていったのです。しかも、既存のコーヒーチェーンとの客の奪い合いではなく、コンビニでコーヒーを飲みたいという、今まで見えていなかった潜在的なニーズから新たな需要を生み出しました。コンビニコーヒーのヒットの後、大きな経済が誕生しました。

次にコンビニが挑戦したのはドーナツです。2014年10月にセブンカフェドーナツを投入他社も追従する形で参入しました。ですが、蓋を開けてみたらコンビニコーヒーほどの成果にはつながりませんでした。

そもそも、経済的にみた時、ドーナツ市場で高いシェアを持つダスキン(ミスタードーナッツ)の売上高は年々減少しており、市場自体が縮小傾向でした。また、コンビニという巨大な鯨が参戦したものの、そこに潜在的なターゲットは存在しません。むしろファミリー層自体の需要は少子化により低下していました。前者のコーヒーと異なり、ドーナツは既存の小さなパイの奪い合いだったために失敗となってしまいました。

こうしたサービスの成否などの背景まで学ぶことで、経済に対するアンテナを高めることにつながっていくのです。

「消費」と「投資」の違い、ひと言で言える?

経済の仕組みを学ぼうとしたとき、避けては通れないのはGDP(国内総生産)の概念です。この言葉を聞くとすこし難しい言葉と感じると思いますが、実は基礎中の基礎の経済学になります。

消費とは?

消費とは多くの人がイメージしている通り、家電や洋服、食事や旅行など、製品やサービスに対して支出するお金です。ご飯を食べると食欲が満たされますし、旅行に行くと非日常的な喜びや発見につながりますよね。

私たちの消費は経済全体の6割を占めており非常に重要な活動です。経済が好調か低調かは、この消費の強弱に大きく関わってきます。消費がどのように変化するのか、意識して見ていくことが大切です。

投資とは?

では、投資とはなんでしょうか?

株式投資や為替などがパッと思い浮かぶかとおもいますが、経済学でいうところの投資の意味合いは少し変わってきます。定義の上では、製品やサービスを生産するためにお金を投じる行為を指します。

例えば、私たちがお店をオープンする場合、不動産や機材や家具、材料などを用意する必要があります。消費とは異なり、製品やサービスを生み出しお金を稼ぐためのものです。将来の生産活動のためにお金を使うことが、すなわち投資です。

株式というのは、その間接的な資金調達を支援する「投資」なのです。

世の中の経済活動は、基本的にこの2種類しかなく、経済が拡大するために上手く機能することが大切です。

政府支出とは

GDPの項目には、投資と消費だけでなく政府支出を含めたものとして定義されています。政府は国民から税金という形でお金を徴収して、それを政府支出という形で消費もしくは投資をします。

税金は国家権力により強制的な徴収を行うため、経済の動向と政府支出のお金の動きには乖離が生じます。皆がお金を使わない時に、積極的にお金を使うようにすれば景気が上向く可能性があります(財政出動と呼ばれています)。

経済分析に関する話では、色々と難しいキーワードが出てきます。ですが、最終的には、ここで取り上げた3つがGDPの基本となっているので必要以上に難しく考える必要はないのです。

なぜ日本では長時間労働がなくならないのか?

労働時間もまた経済を感じるためのヒントとなります。

2016年9月に公表された労働経済白書では、日本の労働生産性が著しく低いということが明らかになりました。とくに厳しいとされるのが製造業です。労働によって生み出された生産額を労働投入量でわって計算されるのですが、労働生産性の低さが顕著でした。

生産効率性が低いというのは、たくさん働いてもあまり儲からないという状況です。

改善するためには、より付加価値の高い商品を生産するか、労働時間を減らすか、の方向にシフトしなければいけません。ですが、現状おかしいと理解はされているものの、この長時間労働がなければ生活を維持できないというのもまた現実です。

また、この労働生産性は前述したGDPから労働時間を割ったもので算出されます。すなわち、この労働生産性を高め、長時間労働がなくならなければ経済は豊かにならないのです。

豊かな国になるためには

GDPは米国などと比較すると低いものの、生産効率性が高いとされるのがドイツです。ドイツの主軸事業は、製造業。設備投資が成長の原動力になっており、時代に合わせて製品単価の高い商品を輸出するといった変化に長けた国となっています。

しかも、ドイツは残業をよしとせずに、残業するのであればマイナス評価を与えられるというぐらいの徹底された生産効率を持っています。

日本との違いは残業時間だけではありません。競争力のない企業を市場から強制的に撤退させる一方、失業した労働者への手当が厚く市場では常に人が入れ替わります。

また、英語教育も高度なレベルで持っており積極的なイノベーションや、ネットビジネスへの取り組みを行って高付加価値なビジネスを成り立たせている状況です。こうした国から日本は学ぶべきことがあるのではないでしょうか。

傍観者になってはいけない

規制緩和などで競争環境を作り出すというやり方は、米国などでそれなりの成果を上げてきました。現状維持ではなく消費者が欲しくなるような画期的な製品やサービスを生み出すことで、あらたな価値を生み出そうという流れです。

日本において、規制緩和や構造改革は何度も挑戦していますがどうしてもうまくいきません。その理由の一つとして挙げられるのは、日本人の傍観的な思考です。

米国と比較すると日本はネガティブなマインドとなり、足を引っ張ってしまったり、邪魔してしまう場合が多かったのです。ベンチャー企業を育成しようにも、起業家がおらず、リスクを取って実現しようとする人が少ないのが現状です。

傍観者でいるだけでは、経済は動きません。あなた自身が経済を動かしていると考え行動することが大事です。構造改革や政府の財政支出とみると非常に大きい話ですが、たとえばあなたが転職するだけでも経済は動き出します。

終身雇用は崩壊しており、仕事や会社を変えることへのハードルは低くなりました。複数の仕事を知ることで知識や能力も高まり、新たなアイディアへの結びつきも実現しやすくなります。雇用制度に対してドライに向き合うことができれば、サービス残業なども減少するはずです。

さいごに

経済というのは、数字の羅列ではなく人の「心」から始まります。この心を知らなければ経済を本質的に学ぶことにはつながりませんし、経済活動も前向きにならなければ、本当の意味での景気回復にはつながりません。

数式やモデルによって提示される経済の動きというのは、すなわち人の心の動きが形になったものなのです。

著者
加谷 珪一
経済評論家。日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行っており、ニューズウィーク日本版(電子)、現代ビジネスなど多くの媒体で連載を持つ。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
出版社:
SBクリエイティブ
出版日:
2017/04/26

※Bibroの要約コンテンツは全て出版社の許諾を受けた上で掲載をしております。

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