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世界インフレ時代の経済指標
エミン・ユルマズ
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経済社会
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重要な経済指標はどれか?それをどう読み、どう使うのか?

「経済指標」といっても、本当にたくさんの種類があります。有効求人倍率、失業率などの雇用関連、企業物価指数や消費者物価指数、GDP、鉱工業生産指数、機械受注統計、日銀短観、景気動向指数などなど。他にもたくさんあります。

それと同じように米国には米国の、中国には中国の経済指標が存在します。経済活動や金融のグローバル化が進むなかでは、恐らく日本の経済指標だけを見ていては、世界経済の実像を把握することができません。つまり世界の経済指標を理解することも必要になります。

大事なのは、経済指標の中身を知ることではなく、経済指標として出てきた数字を、どう読み解くのかということ。そしてもうひとつ大事なことは、異なる国のいくつかの経済指標を、ひとつの「流れ」として見るセンスです。

マクロ経済の流れ、現状を把握するためにまず見るのは、米国の経済指標です。なぜなら、世界経済の大きな流れは、米国を見ないとわからないからです。米国で発表される経済指標は別段、先行的な動きをするものではないのですが、大きなトレンドや転換点は、やはり米国の動きを見ないとわかりません。ビジネスの最前線においても、あるいは政治の世界においても、常に米国は各界のリーダー的存在であり、だからこそ、その一挙手一投足が注目されているのです。

米雇用統計はマーケットを大きく動かす

とにかく大事なのは米国の「雇用統計」です。

雇用統計ではさまざまな数字が発表されるのですが、特に注視しておくべきなのが、「非農業部門雇用者数」「失業率」「労働参加率」の3つ。経済的に大きなトピックがない平時の際には、まず雇用統計が重視されます。

その他に米国では「消費者物価指数」ならびに「PCE(個人消費支出)」の2つが注目されます。基本的に低インフレのときには、これらインフレ関連の経済統計は、ほとんど注目されません。ただ、2022年のようにインフレが昂進すると、金融政策の変更が行われるので、一気に注目度が高まります。また米国でインフレが生じている際は、それが米国国内特有の現象なのか、それとも世界的にそういう傾向があるのかを把握しておく必要がありますので、米国の物価動向をチェックしたら、それに続いてユーロ圏、日本、中国の順でインフレ率を見ていきます。

雇用統計と物価の経済指標をチェックしたら、米国なら「小売売上高」を見ます。というのは、米国経済は経済活動の大部分、約7割を個人消費が占めているので、小売売上高の動向は要チェックです。それだけ個人の消費意欲が強いということです。

金利と中央銀行の動向を把握する

マーケット(市場)の動きも、経済の動きを読むうえでは参考になります。

マーケットは経済指標と違い、日々、時々刻々と数字が変動しています。したがって、他の経済指標の何よりも先行性があると考えられます。

マーケットで注目したいのは「金利」です。債券市場で付いている債券の利回り、なかでも2年債と10年債の関係です。

債券市場は、株式市場に対して約2倍の規模があり、そこには大勢のプロの投資家が参加しています。しかも債券の投資家は、株式の投資家に比べて長期的な視点を持ち、各国のファンダメンタルズ(経済状況を示す基礎的要因)に沿った運用を行います。一方で株式投資家は、長期的なファンダメンタルズよりも、目先の心理的な思惑に左右される傾向があるので、株価よりも金利のほうが、景気の先行きを正確に反映して動いていると考えることができます。

各国中央銀行の動きも、ざっと見ておくと良いでしょう。米国ならFRB、日本なら日本銀行、ユーロ圏はECB、そして中国の人民銀行。この4つの中央銀行が、世界の金融を動かしているといっても過言ではありませんし、たとえばFRBならFRB議長、日本銀行なら日銀総裁が、定期的にコメントを出しています。その文言には、各国の中央銀行が今後の世界経済をどのように見ているのかといった内容が含まれていますので、ニュースなどで取り上げられている際には、ホームページなどで再確認しても良いかも知れません。

絶対に押さえておくべき米国の12の経済指標

雇用統計

数ある経済指標のなかでも最重要の指標と言えます。なぜ雇用統計が重視されるのかというと、非常にタイムリーな指標であるからです。多くの経済指標は、集計が終わって発表されるまでの間、多少の日数を必要とするため、若干遅行する傾向があるのですが、雇用統計はほとんどタイムラグがありません。

新規失業保険申請件数

近年になって注目されるようになった米国の経済指標が、「新規失業保険申請件数」です。申請された失業保険の件数をトラックしたものです。失業保険の申請件数が増えるということは、つまり失業する人が増えていることと同義ですから、景気がリセッションに入った可能性が高いと判断されます。

小売売上高

米国では個人消費がGDPの7割を占めているのです。つまり経済活動の7割が、個人消費によって動かされているのです。そして、小売売上高は、個人消費全体の3分の1程度を占めています。小売売上高が好調だと、株価にとってはプラス、債券にとってはマイナス、為替にとってはドル高要因として作用します。

GDP

重要度は「中位」。速報性に欠ける面もあるので、マーケットで株式や債券などを売買するにあたって、判断材料にするような経済指標ではありません。GDPの示すところは、総額を見ることによって各国の経済規模を比較できるのと、前年同期比の伸び率を見ることによって、その国の経済がどのくらいのスピードで伸びているのか、あるいは縮小しているのかを判断する材料になります。世界各国がこの統計を取っています。

個人所得・支出

米国の中央銀行であるFRBは、物価動向を把握するうえで消費者物価指数よりも、この個人支出を重視するとも言われています。個人消費が旺盛になれば、徐々に物価が上昇傾向をたどるので、個人支出の動向を押さえておけば、消費者物価指数が上昇する前にインフレの兆候を把握できるというわけです。つまり個人支出は消費者物価指数の先行指数的な存在と考えられるのです。

消費者信頼感指数とミシガン大学消費者態度指数

経済指標の重要度という点では、「中」くらいではありますが、景気が転換点を迎えるときに注目されることがあります。消費者信頼感指数は、5000世帯の消費者を対象にして景気や雇用情勢、消費動向などをアンケート調査したものです。消費者の視点から米国経済の状況を把握できます。

また、似たような名称の経済指標に「ミシガン大学消費者態度指数」があります。名前の通りミシガン大学が作成・公表している経済指標です。

耐久財受注

この経済指標は、マーケットに及ぼす影響がかなり大きいので、投資家は注視しておく必要があります。基本的に多くの経済指標は景気の動きに対して遅行するのが普通なのですが、耐久財受注は、景気の動きに先行する傾向があります。耐久財を製造しているメーカーが、数カ月間、あるいは半年間くらいで製造する耐久財の注文を、「受注」した段階で把握するものだからです。したがって、景気がリセッションの段階で、耐久財受注の数字が多少なりとも好転したときは、数カ月から半年先にはリセッションが終わっているという判断につながります。

鉱工業生産指数

米国の製造業は年々、経済全体に占める比率が小さくなってきています。2020年時点で、製造業がその国の経済全体に占める比率を見ると、米国の場合、たったの10.8%です。日本は20%程度、中国で27.5%です。したがって世界の工場である中国の鉱工業生産指数は、世界の製造業の動きを先行する傾向がありますし、その観点で言えば日本の鉱工業生産指数は一致指数であり、米国のそれは遅行指数であると考えられます。

ISM製造業景況指数

ISMとはInstituteforSupplyManagementの略で、「全米供給管理協会」のこと。この協会は、米国で最も権威のある職業組織のひとつで、アリゾナ州をベースにしている、企業の購買担当者が集まってできた組織です。購買担当者は、自社製品に対する将来のニーズを予測して、原材料や部品を調達します。近い将来における製造業への需要を先取りして、購買担当者の動静が左右されるのです。

新規住宅許可件数

米国住宅市況は、景気に対して敏感に動きます。景気が悪くなりそうだと、真っ先に悪化し、景気に回復の兆しが見えると、住宅市況は真っ先に良くなります。またインフレに対しても非常に敏感です。

消費者物価指数

消費者物価指数とは、米国の労働省が毎月作成・発表している経済指標で、消費者が購入する商品とサービスの価格変動を測定したものです。つまり消費者物価指数の前年同月比がプラスだと物価上昇、マイナスだと物価下落を意味します。毎月、前年同月比がある程度の高さで上昇を続けるとインフレ懸念が浮上し、逆に大幅なマイナスが続くとデフレ懸念が浮上します。

著者
エミン・ユルマズ
2006年、野村證券株式会社入社。企業情報部に配属、M&Aアドバイザリー業務に従事。2009年、同社・機関投資家営業部配属。2010年、同社・外国株式営業部配属。2014年、野村證券退社。2015年、四季リサーチ株式会社入社。2016年、複眼経済塾株式会社、取締役・塾頭就任。
出版社:
かんき出版
出版日:
2023/5/10

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