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節約する人に貧しい人はいない
中川 淳一郎
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税金・保険・年金
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「節約」=他人と比べない価値観を手に入れることなのです。

見栄を張らず、他人と競争せず、自分の人生こそが最良であると思えることが大切なのです。「節約」を通して他人と比べない自分だけの人生を手に入れる、この本では「カネ」との向き合い方を通して、自分らしく生きるためのヒントを紹介したいと思います。

節約と衣・食・住

「他人からどう見られるか」をなぜそこまで気にするのか

多分私は「ケチ」でしょう。しかしそれは、「自分にしか関係がないこと」においてであり、「他人様がかかわること」についてはあまりケチではありません。この2つは何が違うのでしょうか。整理してみましょう。

・自分にしか関係のないこと…家具、自動車、家、アクセサリーなど

・他人様がかかわること…カネをあまり持たない人との宴会で使うカネ、他人様からいただくカネ、外注先に支払うカネ、借金の相談など

収入が上がっても貯金が増えない人の理由は、ただ一つ。「見栄張り消費」であり、自分の「箔」のために代金を払っていることが多いからなのです。上の例で言えば「自分にしか関係のないこと」に見栄を張っている場合がほとんど。大事なのは「他人からどう見られるか」を気にしないことなのです。

お金の貯まらない人は「収入に応じた生活をすべき」と考えがちです。たとえば世間が言うところの「家賃は給料の30%」「できる男は靴と腕時計から」など、誰が作ったか分からない通説を信じている場合が多くあります。重要なのは「金銭感覚」であり、貧乏だった頃の金銭感覚を持ち続けていれば、貯金はいくらでもできるようになります。年収が上がるにつれて生活レベルも上げていてはいつまでたっても貯金は増えません。

私の友人で実に可哀想な経験をした男性がいます。若くして結婚した彼の妻は極度の見栄っ張りだったのです。入社2年目で結婚した彼は、その時は給料がそれほど高くないため、結婚指輪は給料の1ヶ月分程度のものだったのですが、それから10年以上が過ぎた頃、30代前半で結婚する女性の指輪を彼女は目にするようになります。それが自分の指輪よりもあまりに立派なため、夫に対して「あの時はアンタの稼ぎが悪かったから私には惨めな結婚指輪しかない。もう一度買い直しなさい」と命令し、350万円の指輪を再度買わせました。

もちろんそんな性格の彼女ですから、それだけでは済みません。彼女の行動原理は「見栄」「他人と比較して優位に見られたい」でした。その後も「お受験合戦」「ママファッション対決」「高級車自慢対決」といった見栄の張り合いが続いていくことは想像に難くないでしょう。

節約と人間関係

結局人間がカネをくれるのだから人間と仲良くなるしかない

私は会社員時代、同期5人で週に4回というペースで飲みに行っていました。その当時はとにかく飲み会が楽しいから集まっていたのですが、それが後々仕事に活きてきました。その後、同期たちは会社に残る者、独立していく者と、それぞれ別の道を進むことになるのですが仕事上の接点は続きました。独立の道を選んだ私に、とあるPR業務のプランナーとして推薦してくれた副社長になったAさん。外注先として何かと仕事を回してくれるBさん。そこには仕事人としての能力だけでなく「付き合いやすさ」といったものが重視されているのは間違いありません。

打算で人と付き合うことを推奨している訳ではありませんが、人と人とで仕事を行う以上、避けては通れないものでしょう。

自分が発注側になった場合でも同様に、人と人の付き合いが重要なのは言うまでもありません。私は大学時代の同級生と共同で会社を経営しているのですが、二人の間での共通認識のひとつに「カネにうるさいヤツは切る」ということがあります。

ある日、ライターへのギャラの支払いが遅くなってしまったことがあったのですが、1分でも遅れたことにクレームのメールを送ってくる人がいました。すると、その相手は振り込み日前になるとリマインドメールを送ってくるようになったのです。

その後、その発注相手とは仕事の継続契約をしませんでした。ビジネスはドライなものと割り切って利益を追求するのが本来の姿なのかも知れませんが、やはり人と人、「誰と」仕事をするかという感情が左右する場面は多いものです。

得るものが多い飲み会、無駄な飲み会

あくまでビジネスに繋げるという観点で見た場合、得るものがある飲み会というのは、現在一緒に仕事をしている人の慰労や、これから獲得したい相手との飲み会であり、課題や問題点を聞く良い機会になります。その一方、無駄な飲み会とは既に関係性ができている者同士の飲み会です。もちろん娯楽として楽しむのは一向に構いません。

たとえば、仕事相手が異動などで自分の担当から外れる時、送別会を開催するのはもちろんのこと、異動後も飲み会に誘うのが吉であるといいます。というのも直接的なカネのやり取りが消えたとしても「あなたと会いたいです」という意思表示をすることは、相手も気持ちが良いものですし、その人はあなたのそういったところを後任者に伝えてくれるでしょう。

節約とお金の管理

借金を頼んできた友人

私が27歳で会社を辞め無職だった頃、友人が会いたいと言ってきました。借金の相談でした。最初は50万円を貸してくれと言ってきたのですが、多重債務に陥っているようで、50万円でしのげるのは支払いが迫った消費者金融だけの状態でした。彼を追求すると全部で250万円を借りているようだったので、利子を払うのもバカバカしいだろうと250万円を貸しました。その時彼に「お前は給料も高いのに一体何をやっているのだ」と聞いたところ、「あったらあっただけ使ってしまう。欲を出したり、より自分をイケてるように見せるために身の丈以上に使ってしまった」というものでした。

結局1年半で全額返済されたため、彼とは今だに関係は良好ですが、この例からも正常な金銭感覚を持つことがいかに重要であるかが分かります。収入を増やす算段がないのであれば、とにかく節約を考えなくてはいけません。

「コスパ」について

近頃は色々なことを「コストパフォーマンス」(コスパ)で考える風潮があります。所得が下がっている中、同じだけのカネでより多くの効用を得たいと考える人が増えていることが原因でしょう。

コスパの言葉の使い方を見てみると、基本的には「量」「質」が金額に見合うものかという点に収斂されていて、店側のアピールとしてもコスパの良さを謳う場合が多い傾向があります。

しかし、コスパを重視し過ぎると当初の目的を逸脱してしまうことがあります。それは、とにかく量が多く値段が安い“そこそこ”の店を選ぶようになってしまうということです。

育ち盛りのお金のない若者であればコスパ重視でも構いませんが、30代中盤を過ぎてまでコスパなんて言葉を使うのは恥ずかしいものであって、それは飲み会や会食の本質(人とのコミュニケーション)を理解せずに、単に腹を満たすための食事をしているに他なりません。簡単に言うと「粋」ではないのです。中年を過ぎたら適正量の食事をそれなりの雰囲気の店で味わい、それに見合う金額を払う習慣を身につけるべきでしょう。

節約と稼ぎ方

仕事のギャラは自分から交渉した方がいいか?

私はこれまで一度もギャラ交渉をしたことがありません。最近はフリーランスの人たちがSNSで「自分を安売りするな」としきりに主張しています。しかし、これは人間の気持ちや機微といったものを分かっていないのではないでしょうか。

私がギャラ交渉をしてこなかった理由は、発注主には決められた予算があり、その中でやりくりをしなければならないことを理解しており、だとしたら金を握っている人間、つまり発注主の仲間になる必要があると考えているからです。そして仲間であれば今後無理を聞いてもらうこともできるようになります。

エアポケット的な場所を狙え

カネを稼ぐ方法をもう少し書くとすれば、それは他の人がやっていない位置をねらうことです。就職で圧倒的に有利な東大生が狙うような企業はすでにピークを超えたという説がありますが、まさにこの通りなのです。人があまり注目していない分野を目指す方がトクをすることが多いでしょう。私の場合、2006年に「ネットニュース編集者」と名乗り始めました。今でこそ耳にする言葉ですが、当時はまだなかった職業だったと記憶しています。

これにより「ネットニュース」というジャンルがあることを明言し、メディアから次々と取材の申し込みが寄せられることになりました。ここから「何やら面白い職業があるな」と次々に仕事が舞い込むようになりました。

節約と恋愛・結婚

女性にプレゼントしたことはほぼない

クリスマスやバレンタインデー、結婚記念日などに男性から女性にプレゼントをあげることが風潮になっていますが、私はこれまでの人生で女性にプレゼントを贈ったことはほぼありません。物欲のあまりない女性としか付き合ったことがないからかも知れませんが、そもそも「別に人々はモノを欲しがっていないのでは?」ということに気がついたのです。

何か欲しいモノない?と聞かれてもすぐに答えられない人がほとんどなのではないでしょうか。かつて人々は他人が勝手に作ったルールに従っていました。婚約指輪はなぜか「給料の3倍」ということになっていました。誰が決めたかと言えば、それは宝石業者に他なりません。それに従って男たちは必死にカネを貯め、世間のルールに従っていました。クリスマスになればティファニーでアクセサリーを購入しシティホテルの部屋で一夜を過ごします。しかし、いつしかこうした世間のルールはどうでもよくなり、各人が自分の金銭感覚に従い消費行動を行うようになっていきました。

交際相手・配偶者は無駄金を使わない人

交際相手や配偶者選びに「無駄金」を使わないという点は非常に重要です。

私が結婚した女性も金銭感覚が非常に合う、一言で言えば「ケチで見栄を張らない」人であり、世間一般の水準からすれば高い所得である二人の贅沢と言えば週に一度の二人で6000円の飲み食いくらいです。記念日にいちいち何かを求めることもなければ、クリスマスや誕生日にプレゼントをねだることもありません。

また、彼女にとってはタクシーに乗ることは贅沢なようで、いつも電車で間に合うように早く家を出ています。夫の稼ぎが多く、財布に余裕があるのなら毎日タクシーに乗っても良いものの彼女は電車に乗り続けています。

こういった金銭感覚を持っているからこそ、たまに高級焼肉店に行くと「おいしいね!」と大喜びし、ラーメン屋でも「味玉と肉もやしのトッピングしてもいいかな?豪華過ぎるかな…」と躊躇する。いくら収入があってもこうした感覚を持っている方が、幸せな人生を送れるのではないでしょうか。

虚栄心を飼い慣らす

数年前、東京オリンピック終了を機に引退を考えました。その当時47歳。寿命までの期間、30年ほどは生きると考えると、今はその30年の人生をカネに縛られずに生きるための準備期間と捉えています。

貯金をするためには節約をしなくてはいけません。節約をするためには見栄を捨てなければいけません。見栄を捨てるためには他人との競争やマウンティングをしないようにしなくてはいけません。

人生はすべて、最終的にはプラスマイナスがゼロになります。たとえば食事。大抵のおいしいものは高カロリーです。「おいしい(プラス)」と「太る(マイナス)」のバランスをどう取るか。また、勉強という苦行(マイナス)を頑張れば頑張るほど良い大学に入学できる(プラス)ということもあります。

このごく当たり前の摂理が理解できて、人生に余計な期待をせず、慎ましい生活を続け、気付いたら大往生。これが実現できれば本当に幸せなことでしょう。

著者
中川 淳一郎
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者などを経て充分稼ぎ、2020年に東京を脱出して佐賀県唐津市在住。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『恥ずかしい人たち』など。
出版社:
幻冬舎
出版日:
2016/3/10

※Bibroの要約コンテンツは全て出版社の許諾を受けた上で掲載をしております。

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