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増税地獄 増負担時代を生き抜く経済学
森永 卓郎
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今の日本は誰もが破綻の可能性がある

これからの日本は、皆さんご存じの通り少子高齢化がますます進展して、減少する労働人口で高齢者を支える社会構造になると見込まれています。その中で、政府が国民に今よりも重い税負担を求めてくるのは避けられず、私たちは給料が増えないのに税金だけが重くなる二重苦に苦しむ羽目になるでしょう。

さらに、この状況下で景気は大きく後退して深刻な不況、いわゆる恐慌に陥る可能性が高いとも予想します。

恐慌なんてそんなに簡単にやってくるものではないと思っている方も多いでしょう。しかし、実は世界恐慌ほど大規模なものでなければ、恐慌は好景気と好景気の間で何度も繰り返されています。

そして、いざ恐慌となった際に一番その影響を受けるのは会社員などの賃金労働者です。過去の歴史を振り返っても、繰り返される恐慌のたびに多くの賃金労働者が苦しい生活を強いられており、次にやってくる恐慌でも同じようになる可能性は非常に高いと考えられています。

庶民以外にも、自称「勝ち組」の人々でさえ恐慌の影響は避けられません。

たとえば、夫婦で高額の住宅ローンを組んでいるような高収入の人々は、どちらかが失業してしまうとあっという間にローンの返済ができなくなってしまうでしょう。

株式投資で生計を立てているような人も同様に、株価の大暴落によって資金の大半が一瞬にして消えてしまう可能性があります。

このように、今の日本には増税地獄と恐慌によって国民のほとんどが窮地に追い込まれてしまうリスクが潜んでいるのです。

日本国民はすこしずつ貧乏になっている

皆さんが働いて得た所得に対して税金や社会保障費をどれだけ支払うかを表す数値に「国民負担率」というものがあります。

国民負担率は、一般的に税金の負担割合を示す租税負担率と年金支払いなどを示す社会保障負担率の2つがあります。1970年度には租税負担率18.9%と社会保障負担率5.4%で国民負担率は24.3%でした。

これは、たとえば所得が100万円のひとであれば、そのうち24.3万円が国に徴収されて75.7万円が手元に残ることを意味しています。

それが2021年度になると、租税負担率28.7%、社会保障負担率19.3%、国民負担率はなんと48.0%まで増加したというデータがあります。

先ほどの例で言うと、100万円の所得があっても手元に残るのはたったの52万円だけというわけです。

さらに悪いことに、この割合は国民の平均値を表していますが、税や社会保障費は所得が少ない人ほど負担率が高くなりやすいため、お金持ちよりも庶民の方が重い負担を強いられる傾向があります。

ちなみに、約50年でここまで急激に負担率が高まったのには消費税の導入・増税が大きな役割を果たしたわけですが、それ以外にもさまざまな要因があります。

たとえば、東日本大震災の復興費用として復興特別所得税が新設されたことや、相続税の大幅増税、所得税や住民税を計算するときの控除の圧縮、健康保険料率の引き上げ、介護保険制度の創設など、具体例を挙げればキリがありません。

その結果、先に述べたように国民負担率は50%近くまで上昇し、一般的なサラリーマンであれば給料の半分以上を国に持っていかれてしまうという状態になってしまったのです。

消費税の増税は不要

少子高齢化が進み、社会保障費の不足などさまざまな財政的課題を克服するためとして、あらためて消費税増税が議論され始めています。しかし、消費税増税は必要ないと考えます。

その理由は、政府が財政均衡主義という間違った考え方に縛られているから。財政均衡主義とは、国債の借り入れや返済を除いた財政収入と支出のバランス、いわゆるプライマリーバランスを黒字に保つべきであるという考え方です。

なぜ政府がプライマリーバランスの黒字にこだわるのかといえば、国の借金がどんどん膨れ上がり100兆円を超えるようであれば、円が暴落して国債が売られるハイパーインフレに陥ると、財務省をはじめとした経済学者がずっと唱え続けてきたためです。

しかし、現実として我が国の借金が100兆円に迫っても日本経済には変化は見られていません。国債の価格においても、為替を見てもそれぞれ大きな変動はなく、ましてやハイパーインフレなど兆候すら確認されていません。

しかし、我が国は社会保障制度の立て直しと財政収支の改善を合言葉に次なる消費税増税へと向かっています。

日本経済は世界一健全

皆さんが「日本財政のイメージは?」と聞かれたら、ほとんどの方が借金まみれの赤字財政だと答えるでしょう。

事実、我が国の財務書類を見ると借金、つまり負債は約1,500兆円あることが分かります。しかし、一方で資産も1,000兆円ほどあり、純債務(純粋な借金)は500兆円ほどということになります。

また、政府が行う借金は国債を発行し、それを誰かに買ってもらうことで資金調達を行います。ところが、その購入者が日銀であれば借金は買ってもらった瞬間に消えてなくなってしまうのです。

なぜ消えてしまうのか。それは、国債には償還期限という満期になるとお金を利子付きで返さなくてはならない日が設定されており、満期日にふたたび国債を発行して資金調達を行えば実質的な借金返済は必要ないというわけです。

通常、国債は買い手がいなければ発行しても意味はありませんが、日銀が政府の発行する国債を無条件で買い入れてくれるので、ほぼ無限に近い形で国債を発行し続けることが可能なのです。

さらに、通常支払うべき利子も日銀に支払った分は全額、国庫納付金として戻ってくる仕組みになっています。

日本の借金が100兆円を超えても、財務省や多くの経済学者が言うような円の暴落やハイパーインフレが起きないことが確認された今、消費税増税という庶民を苦しめるような方法ではなく、国債のさらなる発行によって財源を確保するべきなのです。

目指すべきは住民税非課税

今、老後資金への対策として積み立て投資や米国株投資が人気になっています。高齢期におけるこうした投資は絶対にやってはいけないことです。理由としては、株式投資は暴落によってその価値が容易に半分やそれ以下になってしまう可能性があるから。

せっかく貯めた老後資金が一瞬で溶けてなくなってしまえば、もう老体に鞭を打って働き続ける以外に選択肢はなくなります。しかし、働けば働くほど、稼いだお金は税金と社会保障費に持っていかれるという悲惨な老後が待っているのです。

それでは、老後で悲惨な目に合わないために、私たちがしなければならないことはなにか?

それは、日常の生活コストを年金の範囲内に収まるように構造改革し、勤労収入は住民税がかからないレベルに抑えるという方法です。

具体的には、自分で野菜を作り、太陽光発電などで電気をまかなって、自給自足を進めていき、月の年金13万円ほどでも余裕で暮らしていけるようにするのが目標となります。そうすれば住民税非課税世帯となり、住民税以外に所得税もかからず社会保障費もわずかで済むのです。

こうした生活を退職後にしようと考えている人は多いと思いますが、それでは遅いのです。現役時代から住民税非課税を目指して豊かな暮らしをするのが一番賢い選択といえるでしょう。

著者
森永 卓郎
経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。東京大学経済学部卒業。日本専売公社、経済企画庁、UFJ総合研究所などを経て現職。主な著書に『長生き地獄』『なぜ日本だけが成長できないのか』『消費税は下げられる!』(以上、角川新書)、執筆のほか、テレビやラジオ、雑誌、講演でも活躍中。
出版社:
KADOKAWA
出版日:
2023/02/10

※Bibroの要約コンテンツは全て出版社の許諾を受けた上で掲載をしております。

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