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ウォール街のランダムウォーカー
バートン・マルキール
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株式
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手数料が低く分散投資も可能なインデックスファンド。この書籍では、インデックス投資が推奨される理由が詳細に、分かりやすく説明されています。また、投資を全体で考えたときには資産配分も大切になりますが、そのヒントも得られる一冊。投資経験者はもちろん、これから投資をする人には入門書として読むのがオススメです。
-森永 康平氏-

1973年の初版以来、全米累計150万部を超え、「投資の名著」として絶賛されるベスト&ロングセラーである本書。1990年代半ばに株式投資について知りたいと思って手に取りました。インデックスファントと積み立て長期投資についてはじめて知った一冊です。書かれているのは非常にシンプルな投資法。これから投資を始める方は是非、皆さん読んだ方がいいと思える良書です。
-橘 玲-

「一般投資家のための総合的な投資の教科書」であり、個人投資家必読の書籍。過去のバブルの分析、市場の効率性から、テクニカル分析・ファンダメンタル分析の問題点を指摘、さらには行動ファイナンス、現代ポートフォリオ理論などを網羅的に学ぶことができます。私は、本書からヒントを得て、株式や債券のインデックスETFで低リスクポートフォリオバランスを検討し、これにオプションでレバレッジをかけるという投資法をアドバイスしています。
-守屋 史章-

誰でも取り組めるインデックス投資の長所や始め方を分かりやすく解説した名著です。私は学生時代に本書と出会いその後の資産運用の指針になっています。日々お仕事などで忙しい方や、投資に多くの時間を割けない方にとって、手堅い資産運用を学ぶことができる一冊です。
-たつや先生-

「投資のバイブル」として広く読まれ、ベスト&ロングセラーである本書から、今回は「株価分析の手法」と「行動ファイナンス」に焦点を当てます。

ランダム・ウォーク

ランダム・ウォークというのは、「物事の過去の動きからは、将来の動きや方向を予測することは不可能である」ということを意味する言葉です。

これを株式市場に当てはめると、株価が短期的にどの方向に変化するかを予測するのは、難しいということ。

今日では一般の投資家は、ウォール街のプロにはとても太刀打ちできないと言われています。しかし、事実は全く逆で、個人投資家は、少なくとも専門家と同じくらい、場合によってはそれを上回る、優れた運用成果を上げることもできるのです。

分析の二つの手法

株式投資で一般的な分析方法として取り上げられるのが、テクニカル分析とファンダメンタル分析です。

どちらの分析にもメリットデメリットがあり、投資家は自分の信じる手法で投資を行っています。

ファンダメンタル分析とは

「企業を分析し投資の判断をする」こと。企業が発表するデータ等から財務状況について分析を行い、企業の価値を見出し、株価が割安なのか割高なのかを考えて売買をする手法です。

文章にするとわかりにくいですが、細かい指標を抜きにして考えれば、「このブランド、まだ知られてないけど流行るだろうな」「この商品便利だなぁ」などの日常的な感覚の延長線上にあります。

このような消費者の感覚はそのまま企業の成長の可能性を示しているので、その企業の株価は上昇するかもしれません。多くの人に認知されれば売れるのにまだあまり知られていないサービスや商品を抱える企業の株は立派な割安な株と言えるでしょう。

世界一の投資家ウォーレン・バフェットも取り入れている手法で、なんとなく「ファンダメンタルズ分析=正しい投資手法」のような印象まであります。

しかし前提条件である「企業の本質的価値」という部分に疑問が持たれています。一体何をもって企業の本質的価値を測り現在株価と比較するのかということです。

ファンダメンタル分析の弱点

ファンダメンタルズ分析は、企業の本質的価値、つまり今後5年、10年にわたって成長を続けた場合と、今の株価を比較するわけですが、そもそも5年後、10年後の成長なんて誰にも予知できないということです。

そもそもファンダメンタルズ分析で重視される決算情報、財務諸表も決して完璧なものではありません。

国や企業によってルールや基準が違い、実際より利益が大きく見えてしまったり、支払い時期によって利益が大きく見えてしまうこともあります。

そうしてそういった企業がファンダメンタル分析をされた場合、素晴らしい投資先と判断され、投資が行われた結果、成長が維持できずその後暴落した事例はいくつもあるのです。

つまり、まず完璧に企業の将来業績を予測することはほとんど不可能な上に元となるデータも正確ではない可能性があったり、偏っている場合があるのです。

過去10年の投資リターンが大きかった銘柄は次の10年での市場平均を下回るなどのデータも提示されています。

先に挙げた世界一の投資家ウォーレン・バフェットも常に市場平均を超え続けてきたわけではありません。

ウォーレン・バフェットの有名な言葉に、妻への遺言としての「遺産の90%はS&P500のインデックスファンドに投資しろ」というものがあります。簡単にいえば、企業を分析したうえでの投資は、凡人には難しいということです。

テクニカル分析とは

「過去の株価の動き方から投資の判断をする」こと。一般的にイメージする「株式トレーダー」のようなもので、株の値動きを表示するチャートと指標を利用して、売買タイミングを分析します。

チャートは売買の結果としてできたものであり、過去のパターンを紐解いて同じようなパターンがあれば将来も同じような動きをする可能性が高いものと予想します。

チャートだけに注力するだけでよく、経済全般における知識がなくても問題なく分析できます。ファンダメンタル分析における感覚の部分が排除された、システマチックな分析法です。

テクニカル分析の弱点

テクニカル分析でいうトレンド、つまりモメンタムについて、過去100年以上の膨大なデータを分析した結果、モメンタムのような株価の動きは存在するが規則性は全くありませんでした。

モメンタムというのは、コインを4回投げたら連続で表だったから次も表が出るだろうと言っているのと同程度の正確性しかない、ということです。

実際にテクニカル分析を利用して資産を増やしている人はたくさんいますが、全体を長期的に見ればバイ・アンド・ホールドより顕著に良い成績が出せるかと言うと、そんな根拠はどこにもない、ということです。

行動ファイナンス

不確実な状況での判断は、多くの人が楽観主義になる

投資とは不確実性がつきもので、そのような状況のなかで人々が判断を下すには、ある規則性をもって間違いを犯すと認知心理学者の研究者たちが証明しています。

数々の研究結果では、自分の信念や能力に対する過信と将来に対する過度の楽観主義が普遍的な傾向があると指摘されました。

研究において、被験者に対してさまざまな質問を投げかけたところ、実際の能力より高い能力があると見積もっているといった結果が出たのです。

また人々が損失を恐れ、回避したがる傾向があることもわかっています。しかし、確実に損失が発生する場合には、人々はむしろ一か八かに賭けるようなリスク(不確実性)があるほうを選ぶとの結果も示されています。

自尊心と後悔が間違った行動へ誘導する

投資行動に対する自尊心と後悔の念を回避するために投資家は間違った投資行動を間違いと認めたがらない傾向があります。

その傾向は損失が発生している投資銘柄を投資家が手放さない状況にも表れているでしょう。

その結果、個人投資家は値上がりしている銘柄を売却して儲けを出して自尊心を満たし、値下がりしている銘柄は手元に置いておくという選好が見られます。

これは、投資家による非合理的行動といえるでしょう。

行動ファイナンス理論から得られる2つの教訓

株式投資においては、「最大の敵が自分だ」とも言われるように、いかに自分自身の心が気まぐれで振り回されやすいか認識するのが重要です。

頻繁に売買を繰り返すパフォーマンスをする投資家より、慎重にバイ・アンド・ホールドを行う投資家や、幅広い銘柄のインデックス・ファンドを辛抱強く持ち続ける投資家のほうが勝利を手にするのです。

どうしても自分で銘柄を選びたい場合には、次に示す行動ファイナンス理論の教訓をいかすことが重要でしょう。

群衆の暴走に巻き込まれるなかれ

群衆の暴走に巻き込まれるメカニズムははっきりしています。投資をする際の意思決定に身の回りの友人たちが与える影響の大きさは、多くの研究で明らかにされているのです。

シラーとポンドが行った個人投資家に対する調査では、一番最近購入した銘柄を選んだ理由の多くが友人や親類の勧めだった、という結果が出ました。

また、ホング、キュービック、シュタインの実証では近所づき合いや教会での交流といった人間関係による要因が、個人的要因より株式投資の選択に大きく影響することがわかっています。

過度の売買を控えるべし

投資家は自信過剰で、財政管理のために不必要な売買を繰り返す傾向があると指摘されていました。

投資は長く保有するほど税の支払いが先延ばしになり、遺産となった場合は事実上の免税となります。それに対して短期売買した場合は、値上がり益に対して総合所得税率による課税がされます。

投資の短期売買のコストはとても大きい点を頭に入れておきましょう。また男性のほうが女性より自信過剰で頻繁に売買する傾向があります。

その他の身を滅ぼす投資戦略

新規公開株は要注意

2000年に破綻したインターネット・バブル下において、新規公開株(IPO)を公開価格で入手するのは大儲けにつながる投資法でした。

しかし、その後の新規公開株の流れを見ていくと、新規公開株を公開価格で買ったり、公開直後に公開価格を上回る価格で買ったりするのは推奨できません。IPOはリターン率も悪く、公開6カ月後には市場平均を下回るのです。なぜなら、公開から6カ月は持ち株を処分するのが禁止されているから。6カ月を超えた時点で売却が始まるため、株価が変動するIPOが多く見受けられます。

また、個人投資家はIPO銘柄を公開価格で買える可能性はまずないと言っていいでしょう。人気のある銘柄は大手の機関投資家や裕福な個人投資家に買い占められています。一般的な個人投資家が公開価格で手に入れられるのは、非常に質の悪いIPOに限られるでしょう。

「耳寄りな話には耳を貸すな」

耳寄りな話は投資家にとって魅力的である一方、よく接する情報でもあります。耳寄りな話には裏があると認識して、安易に話に乗らないように気をつけましょう。

「保証つきの投資手段」を信用するな

投資家のプロやアマチュアにはたびたび、投資信託を選別したり、株式から資金を引き上げたりするタイミングは見極められる、と話をしますが、本当にそうでしょうか?

実は、タイミングは誰にもわかりません。過去を分析すれば、確かに適切なタイミングだったとわかる事例はありますが、そのタイミングをそのまま応用しようとすると必ず失敗につながります。

2008年に発覚したバーナード・マードフによる詐欺事件の本質は、多くの人々がマードフの運用するファンドのリターンが毎年10〜12%で、現実的だと信じてしまった点にあります。

毎年10〜12%と、マードフは控え目なリターン率を提示しました。これが人々がリターンを信じる要因となったのです。もし信じられないほど高いリターンを約束したのであれば、さすがに誰も信じなかったでしょう。

長いスパンで見ても成功と言える流れがわかるときがありますが、投資におけるタイミングや常識は変わるものです。おいしい話を聞いても鵜呑みにせず、堅実な投資を心がけましょう。

投資家や市場は単純ではなく、学ぶ姿勢が重要

何人かの行動ファイナンス学者は投資家の間違いの規則性を利用すれば、合理的な投資家が市場平均に勝てるはずだと主張しています。

すなわち、投資家の非合理的行動でさえパターンがあり、それを読み解こうとする主張です。ですが、投資家や市場はそれほど単純ではありません。

今後もより新しい考え方や市場の流れを研究し、日々学んでいく姿勢が重要です。

ウォール街 三通りの歩き方

ウォール街をどのように歩き出せばいいのか。それには、大別すると三通りの歩き方があります。第一のアプローチは思考停止型の人の歩き方。第二のアプローチは手作り型の人の歩き方。そして、最後のアプローチは専門家任せの歩き方です。

第一のアプローチをとる場合は、様々な資産クラスと同じ動きをするように設計された、いろいろなタイプのインデックス・ファンドを買うだけです。このアプローチは、極めて簡単である点が大きな魅力になります。

第二のアプローチはウォール街をジョギングしてあちこち回り、これはと思う業種や国、地域を中心にめぼしい株を一つ一つ拾い集める歩き方です。

このアプローチは大変なハードワークを必要とし、大多数の投資家にはお勧めできませんが、これに凝っている人たちによればこれ以上に面白い探索方法はないと言います。

第三のアプローチは、あなたが雇ったプロのランナーに、あなたの代わりにウォール街を駆け巡らせればよいでしょう。プロの投資アドバイザーたちは、あなたのリスク許容度に応じて、幅広い分散投資のメリットを十分享受できるような資産ミックスを選んでくれるでしょう。問題は高い手数料や、しばしば利益相反問題が発生することです。

インデックス・ファンドの優位性

お手軽でリスクの低い資産運用を希望する多くの投資家に対しては、長い株式市場の歴史と教訓を踏まえて生まれた内外のインデックス・ファンドを使って、老後資金を運用することをお勧めします。また、全投資家に対して、特に老後資金の運用を中心に、少なくとも一部分はインデックス・ファンドを組み入れることをお勧めしたいです。

インデックス・ファンドないしETFを買えば、幅広い分散投資、節税、それに最低の運用コストで市場平均リターンが入手できるのです。

個々の銘柄に投資したい場合でも、多くの機関投資家が採用しているやり方を見習うべきです。それは、運用資金の大きな部分をインデックスで運用し、残りの資金でこれはと思う個別銘柄に賭けるやり方。コアの部分で市場平均を確保できていれば、安心して個別銘柄リスクをとれるというものです。そこで多少ケガをしても、致命傷を負うことは避けることができるでしょう。

著者
バートン・マルキール
プリンストン大学名誉教授。ベストセラー『ウォール街のランダム・ウォーカー』著者。大統領経済諮問委員会委員、イェール大学ビジネススクール学部長、プリンストン大学経済学部長などを歴任、大企業の社外取締役も務めた
出版社:
日本経済新聞出版
出版日:
2019/07/20

※Bibroの要約コンテンツは全て出版社の許諾を受けた上で掲載をしております。

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