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【新版】リスクの心理学
アリ・キエフ
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株式
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投資家の人はリスクについて分かっていない人が多いと感じます。リスクを管理するということは不確実性に対してどう対峙するか?利益を得るというよりも損をしないことが大切です。損をしないようにする人が結果的に利益を追い求める人よりも結果が出ているのです。リスク管理の在り方を教えてくれる。どうして暴落が起きるのかを心理的な面で解説してくれている一冊です。 - 中原 圭介 -

株式投資をやったことがある人なら誰しも、市場の不確実性に頭を悩ませた経験があるでしょう。

自分が買った株はこれから本当に値上がりするのか、些細な出来事で株価が暴落してしまわないだろうか、そんな不安に苛まれる人も少なくないはずです。

一つの企業の株を見ても、業績が良ければ必ず株価は上がり、悪ければ下がるというような単純なものではありません。市場の大きなうねりの影響を受ける場合もあれば、トレンドとは無関係に急激な動きをするケースもあるのです。そんなさまを見ていると、株式投資は多くのトレーダーたちの先読みや思惑が幾重にも交差する難解なゲームのように映るでしょう。本書では、そんな不確実な株式市場で安定的な利益を生み出すために必要な心理を、精神科医で30年以上トレーダーのコーチを務めている著者がいくつものケーススタディを交えながら解説します。

ここでは、数多く語られているリスクとの向き合い方の中から、特にポイントとなる3つについて解説していきます。

リスクを取る

リスクという言葉はもともと、「損失や損害を被る可能性」あるいは「危険な要素または要因」という意味で用いられてきました。いずれも「自らを一定の危険にさらす」ことを強調した定義ですが、本書ではこれを拡張し、「不確実性」や「予測不可能であること」が定義の中心に据えられています。

不確実で予測不能な市場の動きに対処するうえで最も優れた方法のひとつとして、将来を見据えたゴールとビジョンを設定し、それに沿った戦略を策定する方法があります。しかしそこで問題となってくるのは、大半のトレーダーが感情に振り回されたり周囲の出来事を感情的に解釈したりすることによって、自分のビジョンに基づいた戦略に集中できず失敗を繰り返してしまうという点です。

この点をクリアするためには、自分の感情を生み出す常識を理解することに努め、正しいトレーディングにおいてはその常識を捨て去ることが必要なのです。自分がこれまで慣れ親しんできた世界の放棄を意味するこの行為によって、初めてリスクを正しく取れるようになり、トレーダーとして一皮むけることができるのです。その過程においては必ず不安や恐怖があなたを襲いますが、こうした感情に対しても避けるのではなく、自分のものとして受け入れ、第三者的な眼で自分を見られる訓練も避けて通れないもののひとつです。

こうした過酷なトレーニングをクリアした後に、トレーダーは自らが設定したビジョンへの力強いコミットメントが可能になり、目の前の活動に没頭することを通じて一歩ずつ達成すべきゴールへ近づいていくのです。

本当の活力

利益を得ることはトレーディングの目的ですが、利益を得られれば幸せも得られるなどと考えてはいけません。ゴールを設定するのは、眠っている能力をもっと活用できるようにするためであり、自己実現によって幸せになるためではないのです。確かに、もっと上を目指したいという気持ちや、子ども時代に得られなかった能力を努力して獲得すべきという誤った考えから、自己実現を目指してゴールを設定するケースは少なくないでしょう。しかし、子供時代に得られなかった能力を大人になってから手に入れることなどできません。逆に、手に入れようと努力しても満たされない気持ちになり、かえって自分の無力さを感じるという悪循環に陥ります。

そして、本当の意味での能力開花は、今ある自分を正しく認めることから始まるのでしょう。つまり、自分が何も求めていないこと、自分はすでに完全な存在で必要なものはすべて自分の中にあること、そして具体的な目的を達成することで自分を完成させようという努力は無力感を強めるだけである、という3点を理解する必要があります。

この3つを踏まえつつビジョンに沿って行動し、ビジョンと一体になることが能力開花へつながり、トレーディングはビジョンの実現に欠けているものを補う存在であり、今の自分を表現する方法のひとつなのだと分かるようになるのです。

また、たとえその中で恐怖心を抱いたとしても、今この瞬間の感情をすべて引き受けて全神経を今に集中させることがトレーディングにおいてリスクを取ることなのだと理解しなくてはなりません。そして、負の感情を抱いている自分すらもしっかりと受け止めて何にも縛られることなく市場を見渡せば、自分の目標達成に役立ちそうなトレーディングのチャンスがいくつも転がっていることに気が付くはずです。

達人と呼ばれるトレーダーの存在

トレーディングの世界には、達人と呼ばれる優れたトレーダーが存在しています。彼らは、市場がどんな状況下でも常に冷静な判断を下し、的確に利益を積み上げていける人々です。誰もが彼らのようになりたいと願っていますが、当然のごとく皆が彼らのような成果を上げられるわけではありません。このパートでは、達人が達人たる所以、何が普通のトレーダーたちと違うのかをさまざまな視点から解き明かしていこうと思います。

まず、達人が他のトレーダーと違うのは、自分自身や市場に対する先入観をすべて捨て去り、自分のペルソナや常識、ルールや信念をも横において、目の前にあるリスクをフルにとってチャレンジを繰り返している点です。達人トレーダーは混沌とした状況におかれても冷静でいられるように、感情を制御する術を会得しており、リスクをとるときも感情に任せず、冷静な目で売買に影響を与えるかもしれない重要な情報と単なるノイズを区別したうえで、大きなポジションを取っているのです。ところが、達人といっても人である以上は判断を誤る場合もあるでしょう。

しかし、もし判断を誤っても市場が誤りだと教えてくれていると考え、それすら重要なサンプルだと捉えます。そして、市場に従ってそのトレードからは静かに手を引き、被害を最小限に抑えるのです。一方で、判断が正しいと証明されればその方向をさらに推し進めて利益を最大化させる方策を取ります。そのような態度は、簡単に言い表すと自分の読みが正しいかには関心を持っていないということになります。そのときの読みに従って行ったトレードは、もはや過去のものであり、結果だけに焦点を絞り、次に取るべき対策を検討します。そのため、自分の読みが誤りであったとデータで裏づけられても精神的に落ち込んだりはしないのです。

また、多くのトレーダーがやりがちな企業に対する思い入れや勝手な信念で投資することも同じ理由から行いません。一般的なトレーダー同様に不安を持つこともありますが、不安を抱いている自分も受け入れて客観的な眼で自らを捉え、どんな行動が必要なのかを思考することに全力を注ぐことで不安に心を絡めとられることがないのです。

もし、あなたが達人を目指すのであれば、何をしなければならないのでしょうか。ほとんどの人が、何かを変えなくてはいけないのだと考えるでしょう。しかし、自分を変えようと試みてはいけません。自分自身を殺してはいけませんし、ないものねだりはやめて、すでに持っているものがすべてだと認めなければならないのです。今の自分を否定して未来の自分に期待しているようでは達人の域に達するのは難しいでしょう。未来ばかりを見ていると、未来になっても同じことを繰り返し、目の前の自分の成長や大きなトレーディングチャンスを逃すだけになってしまいます。今の自分と真正面に向き合い、必要な技術や知識はすでに自分の中にあることに気づければ、自分を縛る常識や他人の目など余計なことを考える余地はなくなり、達人への道が拓けることになるのです。

著者
アリ・キエフ
精神科医、ストレス管理とパフォーマンス向上が専門。1990年からトレーディングのコーチを始め、株式や債券などのトレーディング成績向上を目指した研修プログラムの開発により、金融界で名声を博す。2009年、逝去。
出版社:
パンローリング
出版日:
2019/09/14

※Bibroの要約コンテンツは全て出版社の許諾を受けた上で掲載をしております。

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