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インフレ不可避の世界
澤上 篤人
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経済社会
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株式
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近づくインフレの波!

インフレとは、「モノの値段が上がり続けること」。インフレと聞くと、発展途上国などが成長する際に、物価や賃金がどんどん上がっていくような「良いイメージ」を持つ方も多いと思います。ではなぜこのコロナ禍に、世界でインフレの波が広がっているのでしょうか?

なぜ今インフレの波がきているのか?

コロナウイルスの影響により、2020年に世界経済は大きく落ち込み、ほとんどの国がマイナス成長を余儀なくされました。その反動もあり、コロナが終息しつつある現在では、経済活動がコロナ前の水準へと戻ってきているため、昨年からの株価の戻り値だけを見ると、大きく上昇をしています。

 

また米国では、コロナへの経済支援策として、一人当たり最大で約16万円の現金給付や大規模な失業手当を実施しました。その結果、米国の消費需要は急拡大し、下図でも分かるとおり、2022年の1月には、米国の消費者物価指数は前年同月比7.5%増を記録しました。これは実に39年ぶりの高い伸び率です。

出典元:「インフレ不可避の世界」

しかし一方で、コロナにより移民の入国規制があったり、モノ不足が生じたりと、供給側の体制が整わなくなってしまいました。

 

その結果、「コロナからの回復」と「政府の現金ばら撒き」により消費者の購買意欲は高まっているものの、物資や人手などの供給体制が整わず、モノの値段が上がってしまう「インフレ」が起こってしまっているのです。

 

この流れは米国に限ったものではなく、日本でも近年物価上昇が続いています。また、日銀が目標としていた2%インフレも、実は2022年に達成しています。一見すると「目標が達成できたんだ」と喜んでしまいそうですが、このような状況は、「想定外の展開によってであり、きわめて危険な2%インフレ達成」なのです。

コストプッシュ・インフレの恐ろしさ

いま世界で起こっているインフレの波は、物資や人手が足りないことなど、「供給サイド」からの物価上昇圧力が大きな要因です。このように、供給サイドが原因で生じるインフレのことを、「コストプッシュ・インフレ」といいます。

この「コストプッシュ・インフレ」は、需要サイドがどのような状況かは一切考慮しません。たとえ消費者の需要が盛り上がっていなくても、物流が滞ったり、人手が足りずにモノが作れなければ、流通するモノの数も減るため、その分モノの値段は上がり続けます。その結果、物価が上がることで消費が落ち込み、経済はマイナス成長を余儀なくされます。

また、今回のインフレは、様々な要因が絡む「極めてやっかいなコストプッシュ・インフレ」。「世界で多発する戦争などによる影響」、「脱炭素を目指して化学燃料の利用に急ブレーキがかかることによる影響」、「デジタル化に伴い、低所得者層の労働がAIに取って代わられることによる影響」など、非常に様々な要因が絡んでいるのです。

 

過去40年間、世界では大きなインフレの波は起こりませんでした。国が大量の資金を投入した今回のインフレが続くと、いずれ株価は暴落するでしょう。

バブル崩壊はすぐそこまできている!

米国株の異常な上昇

米国株は、現在異常な上昇を続けています。下の図は、1987年末の株価を100としたときの、各年の株価を表したグラフです。2021年には、米国株を除く世界株が435なのに対し、米国株はその約4.5倍の1975にまで上昇しています。

 米国株(米国経済)の独り勝ち?

出典元:「インフレ不可避の世界」

バブル崩壊は近い

米国株がここまで急騰しているのが、ただ単に米国の実体経済も同様に急成長しているからであれば問題はないのですが、米国とその他の国とで、成長率に4.5倍もの差がついているとは到底思えません。このことから、「米国の株価だけが異常にバブル高をしている」ことがわかるでしょう。また、米国株が異常に割高になっている根拠もあり、「いつ暴落がはじまっても、おかしくない」状況なのです。

今から対策しておくことは?

では、そのバブル崩壊に備えて、我々はどのように対策をしておく必要があるのでしょうか?

ほとんどの金融商品は売っておこう

我々の持っている金融商品の大半は金融緩和バブルに乗っかった運用をしているため、バブル崩壊と共に価格は奈落の底に沈んでいくでしょう。また、世界が売りの流れに向かい始めると、マーケットは驚くほど一斉に売りに走り、売りたくても売れない状況に追い込まれてしまいます。

そのため、バブルが崩壊する前の今の段階で、一刻も早く売りに出すべきです。とにかく、株式でも債券でも外貨建て商品でも、ほとんどの金融商品は売るべきなのです。

売らなくていいものは?

しかし、「ほとんど」の商品と言ったように、中には保有しておいても問題ないものもあります。それが、「人々の生活を支えている企業群の株式」です。要は、「我々の生活になくてはならない企業たち」のことです。

これらの企業群は、実体経済から一歩も離れず、バブルに浮かれることなく本業のビジネスに徹しています。そのため割高に買われていることも少なく、バブルが崩壊してもいち早く株価が戻るでしょう。我々の生活に必須な企業であるため、潰れることもありません。

そのため、これら企業群の株式はバブル崩壊下で大きく下落することがなく、他の株式が暴落していく中で、一際注目を浴びることになります。すると、その企業の本業の安定度などが評価され、バブル崩壊下では安定した投資先として一斉に皆が買い始め、株価も急騰していくというわけです。

バブル崩壊で混乱しているうちに刈り取れ!

バブル崩壊により、世界の金融経済が崩壊することは避けられません。大半の投資家は、安心して買い続けてきた株が暴落していくのを見て慌てて売りに走り、大きな損失を被るでしょう。しかし、バブル崩壊を見越して予め準備をしておくことで、皆が混乱して売りに走るタイミングにお得な投資先が見つかる「バーゲンハンティング」ができるようになるのです。

 

皆が混乱して売りに走る状況下では、その株の本来の企業価値を考えずに、とにかく急いで売ってしまう人がたくさん出てきます。そこがまさに、買いの狙い目。本来はもっと高値で取引されるはずの株が、安値でゴロゴロ売りに出てきます。皆が売りに走る中を逆に買いに走ることで、バブル崩壊が落ち着いて株価が回復したタイミングで、大きな利益を得ることができるのです。

著者
澤上 篤人
さわかみホールディングス代表取締役、さわかみ投信創業者。同社の投信はこの 1 本のみで、純資産は約 3300 億円、顧客数は 11 万 7000 人を超え、日本における長期投資のパイオニアとして熱い支持を集めている。
出版社:
明日香出版社
出版日:
2022/03/11

※Bibroの要約コンテンツは全て出版社の許諾を受けた上で掲載をしております。

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