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真のバリュー投資のための企業価値分析
柳下 裕紀
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株式
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コーポレートファイナンス理論というのは、投資家にとっても企業経営をする人にとっても重要な内容ですが、あまり正しく理解されているとは言えません。しかしながらコーポレートファイナンスの考え方を知っているかどうかが、投資も経営も成功するか否かの鍵を握ります。本書は現代人が知っておくべきコーポレートファイナンスの基本を決して難しくなく、数式を使わずにわかりやすく解説してくれます。投資をやっている人はもちろん、企業経営に携わる人、あるいは会社の中で経営戦略に関わる人も読むべき本だと思います。- 大江 英樹 -

真のバリュー投資の定義

世間一般的にバリュー投資とは「割安株投資」と訳され、企業の利益や資産価値などから判断して株価が割安であると考えられる銘柄を購入する手法。

しかし、あえて「真の」とつけている理由は、世間的に知られている内容とは全く異なる考え方だからです。

真のバリュー投資とは

真の価値と支払う価格の乖離=差異によって”儲ける”投資。

「差異によって”儲ける”」ためには、企業の真の価値と価格を常に比較する必要があります。「単に価格が安ければ、もしくは、相場が下がれば買う」という考え方とは異なるのです。

「価値」と「価格」は似ていますが、意味は大きく異なるため、それぞれの言葉の定義を見ていきましょう。

「価値」=企業が自ら創造するモノ 

「価格」=その時々で他社が欲する分量によって決まるモノ=株価

「価格」はインターネットで調べればすぐに答えが出ますが、「価値」の算定は何段階ものプロセスを経るため、投資先の選定をする上で、最も重要で最も難しい部分になります。

「短期」で「すぐに」できることに高い価値はないと考えています。巷に溢れている「簡単に」や「これだけ」「やさしい」といわれる姿勢とは対極の考え方が大切です。

安易に答えを求めないことこそが、リスク低減につながるのです。

時間を味方につける投資

バリュー投資の肝は「サステイナブルな価値創造を確認して組み入れ、競争優位性が変わらない限り保有し続けて、長期に複利で増大する企業価値を享受すること」です。

つまり、単に割安かどうかだけを見極めて、短期的に取引をして利益を得るのではなく、企業価値に着目し、持続的に成長し続ける会社の株を長期的に保有して、複利で倍増していく企業価値の恩恵を受けることが重要なのです。

「時間を味方につける」というのは、「複利」の恩恵を受けるということに繋がるのです。

「価値」を知るにはキャッシュ・フローを見る

投資先の企業を見極めるために、一般的に使用されているのはPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)、EPR(1株当たり利益)などです。

しかし、これらは会計上の利益や純資産額など、「価値」とは全く無関係な数値を基に計算されています。会計上の利益などは、合法的な範囲ではあっても、企業側の胸先三寸で意図的に操作できる数字だからです。

私たちが求めなければいけないのは、企業の真の「価値」です。その「価値」を見るためには、何を基準に考えればよいのでしょうか?

答えは「キャッシュ・フロー」です。

そのため、企業価値分析にはPERやPBRなどの数値ではなく、「真実の数値」であるキャッシュを判断材料として使用します。

投資先企業を選ぶには、その企業にキャッシュを生み出す力があるかどうかが、重要な判断ポイントになってくるのです。

企業価値判定に適した指標「ROIC」

資本の効率性を確認したい場合には、ROE(自己資本利益率)やROA(総資産利益率)が一般的に使用されています。しかし、これらもPERやPBRと同じく、企業価値分析には使いません。

企業価値を判定するのに、一番適している指標はROIC(投下資本利益率)です。

あまり聞きなじみのない人も多いかもしれませんが、ROICは、いかに基本の事業をうまく遂行できたかを示す指標です。この数値を見ることで、調達した資金のうち、どれだけが事業活動に投下され、どのくらい効率的に利益を生み出したのかがわかります。

ROICはいったいどうやって求めるのでしょうか? 計算式を確認していきましょう。

ROIC=税引き後営業利益÷投下資本

運営側からみた投下資本=固定資産+正味運転資本(流動資産ー流動負債)

最終的に投資すべきかどうか判断をするためには、将来価値をDCF法によって算定する必要があります。

しかし、算定にはさまざまなステップがあり、その過程で本質を見失う可能性があるのです。そのため、まずは「本業で価値を創造しているか」否かを、ROICで確認すべきなのです。

実際の企業価値の算定方法「DCF法」

ROICの話の際にも少し触れた通り、最終的な投資判断にはDCF法によって企業価値を確認していく必要があります。DCF法は、将来フリーキャッシュ・フローとその割引率によって現在価値を割り出す方法です。

最終的に理論株価を算定するにあたっては、参入障壁やビジネスモデル、対象企業が属する商品・製品のマーケットなど、さまざまなことを確認する必要があります。いくつもの定量・定性調査を行うことになるため、なかなか骨の折れる作業となりそうです。

しかし、DCF法はフリーキャッシュ・フローを最大の因数としていることに加えて、複数年度を対象にしていること、複利計算を前提としていることから、優れた評価法であるといえます。

事業ステージごとのキャッシュ・フローの動き

企業は導入期、成長期、成熟期、衰退期の4つの事業ステージがあり、各ステージによってキャッシュ・フロー(CF)の動きは異なります。

導入期

・企業を始めたての段階では投資が先行するため、投資CFはマイナス。

・導入期では投資が価値創造に結びつけられていない段階のため、営業CFもマイナス。

・投資を行うためには資金調達が必要なため、財務CFはプラス。

成長期

・投資する対象があり成長段階にあるため、投資CFは引き続きマイナス。

・価値創造に成長の勢いが追いついているため、営業CFはプラス。

・稼ぎの範囲で返済が行われている場合には、財務CFはマイナス。

・積極的投資を行っている場合には、財務CFはプラスとなる場合もある。

成熟期

・投資対象がなくなってくるため、投資CFはプラス。

・価値創造が行えていれば、営業CFは成長期と同じくプラス。

・配当や自社株買いなど株主還元が積極化する時期のため、財務CFはマイナス。

衰退期

・成熟期と同様に、投資CFはプラス。

・衰退期のため、営業CFはマイナス。

・成熟期と同じく財務CFもマイナス。

まずは、それぞれのステージの特徴を理解しておきましょう。企業が置かれている状況と、キャッシュ・フローマネジメントの整合性を見極めることや、CF計算書によって動態分析ができるようになることが最も重要です。

著者
柳下 裕紀
1964年生まれ。株式会社Aurea Lotus代表取締役/CEO。 国内外で20年以上の株式ファンド・マネージャー経験。加えて、企業再生・M&A・債券ストラテジスト等、企業投資・資産運用分野で計30年以上の経験を持つ。
出版社:
きんざい
出版日:
2021/03/02

※Bibroの要約コンテンツは全て出版社の許諾を受けた上で掲載をしております。

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