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株式投資の未来
ジェレミー・シーゲル
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具体的にどのような銘柄へ投資したらいいのか検討していく上で役に立ちます。株式投資を始めてみたものの、方向性に悩んでいる方にとって指針となってくれる一冊です。本書を読み、配当再投資による複利効果を意識した投資ができるようになりました。 - 長期株式投資 -

成長の罠

突然ですが、あなたが今からタイムトラベルできる投資家になったとしましょう。そして、1950年に戻って、次に挙げるふたつの銘柄のうちひとつを選び、現在まで保有するとしましょう(もちろん、今の知識をもったまま)。

石油大手のエクソンモービル(当時の名称はスタンダード・オイル)とハイテク屈指の企業であるIBM。

どちらかを選べと言われたら、あなたはどちらを買いますか?

少し補足すると、エクソンモービルが属する石油産業はすでに成熟しきっており、当時からオールドエコノミーの代表。一方で、IBMは当時急成長中のニューエコノミーの代表格で、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの銘柄です。

また、ふたつの銘柄を具体的な数値を使って比較したとき、一株あたり売上高、一株あたり配当、一株あたり利益、セクター成長率という投資家が重視する指標のいずれを取っても、IBMがエクソンモービルを上回っています。

ここまで解説した段階で、改めてお聞きします。

あなたはどちらの株を買いますか?

ここでIBMと答えた人は、「成長の罠」にまんまとはまったことになります。実は、1950年から2003年までの両者のリターンを比較すると、IBMが年率13.83%だったのに対し、エクソンモービルはなんと14.42%とIBMを上回るリターンを叩き出していたのです。

両者の率での差を見ると僅かですが、長期投資においてはこの僅かな差が金額としては大きな違いを生み出します。

たとえば、1950年に両者へ1,000ドルずつ投資していた場合、50年後にIBMは961,000ドルとなる一方で、エクソンモービルは1,260,000ドルにも増えており、金額的には24%もの差がついてしまうのです。

なぜこれほどまでに両者に差がついてしまったのでしょうか?石油産業とハイテクという全く成長率が異なるセクター間でなぜこのような逆転現象がおきるのでしょうか?

株式の長期的なリターンは「企業の増益率」そのものではなく、「増益率と投資家の期待の差」によって決まるためです。

つまり、IBMは時代の最先端を走る企業として多くの投資家から大きな期待を受けており、結果として株価が実際の企業価値を大きく上回ってしまい、株式リターンが低く抑えられてしまったというわけです。

企業の成長性と投資家のリターンは必ずしも一致しないこと。これが「成長の罠」なのです。

配当は株主価値の源泉

企業がその事業活動を通して得た利益の使いみちには、ふたつの方法があります。ひとつは配当として株主へ還元する方法、もうひとつは内部留保として事業へ投資する資金に充てる方法です。

どちらを取っても株主にとってはメリットがあります。しかし、配当には株主の手に渡る時点で課税されて目減りしてしまうという問題が存在します。

そのため、著名な投資家であるウォーレン・バフェットを始めとする多くの人が、配当を増額するぐらいなら事業への再投資に回した方が株主価値は増大すると考えます。

しかし、その考え方は誤りです。

1971年から2003年の約30年に渡る株式の累積リターンの97%は配当の再投資によって生まれ、株価の値上がり率はたった3%に過ぎないことが調査によって判明しています。

企業が上げた利益が配当として投資家に還元され、投資家はそれを元手に株式を買い増し続けることで、長期的には大きなリターンが得られるというわけです。

さらに、配当には株価下落の影響を受けにくいという特徴があります。そのため、マーケットが大きく下落した場面でも、配当の減少率は小さくなり、株価下落のクッション的役割を果たしてくれるのです。

そして、株価が下落したタイミングで配当を元手にさらに株式を買い増しておけば、マーケットが回復した際には大きなリターンをもたらしてくれるでしょう。

つまり、配当は下落マーケットでのプロテクター、上昇マーケットでのアクセルとして株主価値の増大に大きく寄与する存在なのです。

長期投資こそ株式で行え

長期投資をやる人こそ100%株式で行うべきなのです。

ほとんどの人は、債券やコモディティといった株式以外のアセットを組み合わせたポートフォリオの方が長期的には安全で安定していると考えるはずです。

しかし、株式・長期米国債・短期米国債・金について、過去200年間のインフレ調整後のトータルリターンをみてみると、長期米国債のリターンは年率3.5%、短気は2.9%、金は0.1%だったのに対して、株式は6.5%から7%と高い水準で安定していることが分かりました。

債券は一般的には安全資産と考えられており、債券よりもリスクを取っている株式の方が高リターンになるのは納得でしょう。

ところが、たしかに保有期間が短い場合は株式よりも債券の方がリスクは低かったのですが、15年以上を超えて保有した場合では、なんと債券の方が高リスクだったのです。

この原因はインフレ率にあります。満期債券の支払額はあらかじめ決まっており、インフレ率によってその額が変動することはありません。

しかし、株式では企業が持つ不動産や設備等の資産価値はインフレ率とほぼ連動する形になっており、物価上昇の影響が吸収可能なのです。

その結果、株式は他のアセットに比べてリターンが高いうえに長期的なリスクは抑えられるという結論に至るのです。

そして、この結論を踏まえると、もしあなたが30年以上の長期投資を検討しているのであればすべて株式で保有していくのがベストなのです。

著者
ジェレミー・シーゲル
ペンシルベニア大学ウォートン・スクール教授(金融学)。コロンビア大学卒業、マサチューセッツ工科大学(MIT)で経済学博士取得。ウォール・ストリート・ジャーナル、バロンズ、フィナンシャル・タイムズ(FT)のコラムニスト。
出版社:
日経BP
出版日:
2005/11/23

※Bibroの要約コンテンツは全て出版社の許諾を受けた上で掲載をしております。

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