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【お金の歴史編】MONEY
チャールズ・ウィーラン
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経済社会
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知識・教養
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著者は、世界的ベストセラーとなった『Naked Economics(翻訳版:経済学をまる裸にする)』を書いたチャールズ・ウィーラン。

本書では「お金ってなに?」「インフレとデフレ」「物価」など身近なテーマと共に、近年の金融政策などにも振れながら、「お金のしくみ」について解説。

ここでは【お金の歴史編】として、本書より一部内容を抜粋して紹介します。

アメリカ金融史はやわかり

アメリカ史はまたお金の歴史でもある。我々は商品や黄金や紙を使ってきた。インフレも

あった。デフレもあった。スタグフレーションもあった。アメリカで最も熾烈な政治的戦いは、この国のお金をめぐるものだった。それは国立銀行を求めるアレクサンダー・ハミルトンだろうと、その銀行をつぶそうとするアンドリュー・ジャクソンだろうと同じだ。

ウィリアム・ジェニングス・ブライアンは、銀の硬貨でマネーサプライを拡大しようとキャンペーンを打ったとき、西部の農民たちの利益を考えていた。ニューヨークの銀行は、19世紀と20世紀初頭に頻発した銀行取り付け騒ぎを軽減するために中央銀行である連邦準備制度(FRB)を作ろうとしたが、それは自分たちの利益を守ろうとしたからだ。アメリカの金本位制への執着は大恐慌を悪化させ、長引かせた。大恐慌(これはアメリカとドイツで最も激しかった)が第二次世界大戦をもたらしたとするなら、これは歴史上最悪の公共政策の失敗と言えるだろう。

みんなが知っているアメリカ史のあらゆる章-植民地時代、アメリカ独立革命、南北戦争、西部開拓、大恐慌など―は、それに対応する金融物語を持っている。ときには、そうしたお話はおもしろい余談にとどまる。ときには、それが国の方向性を変えてしまう。

1929年と2008年

1929年の大恐慌と2008年の金融危機は多くの点で驚くほど似ていた。

どっちもきっかけはバブル崩壊だった。―1929年は株価バブル、2008年は不動産だ。そして、どっちも金融システムに内在する弱点、特にパニック時の取り付け騒ぎによって拍車がかかった。どっちの危機も悪循環を引き起こした。貯蓄、住宅、事業を失った人々が支出を削減したからだ(そのせいで他の人々が貯蓄や住宅や事業を失うことになった)。

でも、一つ決定的なちがいがあった。大恐慌のときには、連邦準備制度-まさに危機を予防して経済変動を安定化させるために作られた制度-がしくじったのだった。

MIT経済史家ピーター・テミンが述べたように、医者は患者を殺してしまった。政策担当者たちが、1929年と1930年代初期の出来事に対応したやり方は、岡目八目ながら、まったく非生産的だった。

2008年には、患者は救われた。それができたのは、主に1930年代に学んだ教訓のおかげだ。苦痛はあった。人間の愚考と貪欲さが、最初から最後までむき出しになった。政策担当者はまちがいをしでかし、その一部はもっと時間が持たないと露呈しないだろう。金融危機に対応した規制変化は、次の大規模な危機を避けられるかどうかはわからない。でもこうした事実で根本的な論点を見失ってはいけない。私たちは歴史を繰り返す運命にあるわけではないということで、その大きな理由は私たちが歴史を学んだからだ。

日本

不換通貨の歴史-政府が好きなだけお金を造れる時代-にあって、悩みはいつもインフレだった。無責任な政府は、お金をたくさん作って支払いができる。結果として生じるインフレは、既存の政府債務の価値を減らす。その過程でもちろん、物価上昇のためにそのお金を使っている市民たちは損をする。余計なお金を刷れるというのは、金融政策のチョコバーに等しい―なかなかやめられないのだ。

この無責任な誘惑の見本がジンバブエなら、日本は奇妙な例外だ。20年以上にわたり、日本はデフレとそれに伴う経済的な費用と格闘してきた。物価が下落していると、名目金利が安く見えても、実質金利はかなり高くなったりする。消費者たちは購入を先送りして価格が下がるのを待つ(おかげで小売業者は値下げを余儀なくされる)。負債の実質価値は上がってしまう。不動産などの資産価格は下がり、家計は富を失って、そうした試算を担保として持つ銀行も被害を受ける。

国際通貨基金が2003年にこう結論づけた。「日本で今なお続いている体験は、ごく軽いデフレですらどれほど費用がかかるものかについて、他の場所の政府担当者に対して警告するものであり、それを治療するという課題に直面するよりは、それがそもそも生じないようにするべきだという教訓になっている。日本にとっての教訓は明らかだ。デフレはどれほど軽いものであっても、経済に大きな費用をかけ続けている。したがってインフレ期待を復活させる政策がきわめて必要とされている」

何年にもわたり、経済学者たちはインフレを起こせと日本の尻を叩き続けてきた。あるいは少なくとも、物価下落は止めろと。そんなのは実に簡単きわまるはずだ。他の状況でなら無責任となることをやればいいだけ。もっとお金を刷って、それが消費者たちの手にわたる方法を見つけろと。

経済疾病の原因は複雑だし、日本は相変わらず世界で最も豊かな国の一つではある。でも日本の辛苦をめぐるほとんどどんな分析を見ても、デフレが経済的な病気を悪化させていると結論づけている。物価上昇で日本経済を苦しめるものすべてが治るわけではないけれど、デフレを終わらせると役には立つし、それもかなり有益かもしれない。不換紙幣の時代にインフレを起こすのがそんなに簡単なら、なぜ日本の中央銀行はもっと物価高を演出できない(あるいはしない)のだろうか?

それとも、これまでの経済学がまちがえていたのかもしれない。日本銀行の元総裁は、日本の独特な人口構成の下でインフレを創り出そうとするのは「空気を殴る」ようなものだと頑固に主張した(その批判者たちは、期待が重要なのだと反論した。日銀の親分が、物価は上がらないと信じているなら、他のみんなも上がらないと思うだろう)。

日本は豊かな国だけれど、人口は減少して高齢化しつつある。公的債務もきわめて高いし、組織化された政治的集団の利害が必ずしも経済全体の健康と一致していない(デフレは貯蓄のある人や、固定収入を持つ高齢者にはありがたい)。

先進国の多くはいずれ日本と似てくる(低成長、年寄りたくさん)ので、失われた数十年を慎重に検討して、金融政策と銀行システムがその喪失にどんな役割を果たしたのかを考える必要がある。

ユーロ

ユーロは、欧州統合という長い道のりの中で重要な一歩だった。第二次世界大戦後十年もたたずに、フランスと西ドイツなど一部の欧州諸国は、欧州石炭鉄鋼共同体を作り、参加国の間で天然資源を共有しあうことにした。その明示的な目標の一つは、将来的な武力紛争を最低限に抑えることだった。それに続いて他の超国家的な組織も生まれ、それぞれがヨーロッパ全体の経済と政治的な協力を拡大した。さらには欧州議会など、各種の超国家的な政治機関も創り上げた。

共同通貨は金本位制のようなものだ。各国の通貨価値を固定し、国際取引を簡単で予想しやすくする。金本位制にはいくつかの面倒が伴う。つまり各国が金融政策を使って、自国経済を管理する能力を制限してしまうことだ。ドイツとギリシャとの関係がこじれた核心にあるのがこの問題だ。

これはまた、同じ通貨を使うのと、独自の通貨を持つことの根本的なトレードオフになる。経済学者ロバート・マンデルは、なぜ世界がたった一つの通貨を持つべきではないかという分析により1999年にノーベル賞を受賞した。

ある地域で通貨を共有する利点は、取引費用が下がるということだ―隣の州や国や地域と取引するときにお金を変える必要がない。反実仮想をしてみよう。アメリカが州ごとに50種類のちがう通貨を持っていたらどうだろう。州境を越える取引はすべて外貨取引が必要となる。さらに為替レートがどう変わるかについて、不確実性が加わる。

カリフォルニア州のワイン生産者は、その支出をカリフォルニアドル建てで支払っているだろう。でもその売り上げは、他の州の49通貨建てになっていて、それぞれがカリフォルニアドルに対して変動している。単一通貨、少なくともなるべく少ない通貨の方が、透明性が高く、予想しやすいものにしてくれる。

共通通貨をみんなで持つのは実に楽しいことかもしれないけれど、それに冷水を浴びせる懸念点が二つある。

まず、共通通貨を持つ国々は、共通の金融政策を持たざるを得ない。欧州中央銀行はユーロ圏全体の金利を決めている。ちょうどFRBの金利決定が50州すべてに適用されるのと同じだ。

第二に、通貨を共有すると、その他世界との貿易パターンを左右するために為替レートが使えなくなってしまう。通貨が弱まるということは、その他世界の消費者たちに大バーゲンをしてあげるようなものだ。通貨が相対的に強くなった国に輸出された財は安くなる。もちろん、通貨切り下げには経済的に不利な点もある。輸入品がもっと高くなり、弱くなった通貨の国民は、外国で売ったものの対価として得られるものが減る―実質所得が減るわけだ。それでも、弱い通貨は経済を刺激したり貿易不均衡を修正したりする最高の方法である場合も多い。

アメリカと中国

アメリカと中国は両国の不均衡があわさって、見事に不健全な関係ができあがっている。短期的には共生的だけれど長期的には持続不可能だから、経済学者ハーバート・スタインの有名な観察が出てくる。「永遠に続くわけにはいかないものは、いずれ止まる」。

『アトランティック』誌のライターで昔から中国を見てきたジェイムズ・ファローズは、このスタインのせりふを引用してこう評価する。「経済の実に多くの不均衡と同様に、これも永遠には続けられないし、だから続かないだろう。でもその終わり方-突然終わるか、段階的に終わるか、予測可能な理由で起こるか、パニックの中で起こるか―は今後数年の米中経済にすさまじいちがいをもたらすし、さらにヨーロッパその他の傍観者たちに与える影響は言うまでもない」

ここで一歩下がって、米中経済関係がいかに変なものになったかを、詳しく検討しよう。

まずそもそも、貧しい急成長国は、豊かな成熟国に大金を貸したりはしないのが普通だ。理論的にも歴史的にも、資本は逆の動きを示すはずだ―富裕国で蓄積され、限界投資収益が高いはずの発展途上国に融資される。新しい道路や港湾や工場を建てるのは、中国の方が、アメリカのような先進国よりもっとインパクトが強い―したがって潜在的な利潤も高い。だからこそ19世紀には、資本が世界のその他部分からアメリカへ流れてきた。でも21世紀に資本が中国からアメリカへ?

ファローズは中国の派手な投資については山ほど書かれてきたものの、基本的なインフラ改善が、暮らしの質や市民の将来の生産性に大きな影響を与えられる場所は大量に、特に都市部以外に存在することを指摘する。「よい学校、もっと豊富な公園、ましなヘルスケア、都市部の下水道改善-何を挙げても、それが工場輸出経済と何らかの形で結びついているのでない限り、中国には欠けているか、不十分だ」

著者
チャールズ・ウィーラン
ダートマス大学で公共政策と経済学を教える。著書に全米ベストセラーとなったNaked Economics(『経済学をまる裸にする』日本経済新聞出版社)とNaked Statistics(『統計学をまる裸にする』日本経済新聞出版社)がある。
出版社:
東洋館出版社
出版日:
2017/12/18

※Bibroの要約コンテンツは全て出版社の許諾を受けた上で掲載をしております。

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