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「増やすより減らさない」老後のつくり方
平山 賢一
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経済社会
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専門家の推薦
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インフレが進むこの環境下において、資金を守る方法を教えてくれる一冊。本書では「資金プール法」という手法が解説されています。仕組みは、毎月現金をプールしておき、株価が落ちた時に買付けるというもの。下落相場時、人々の心理は楽観や悲観に揺れ動きます。そうした状況に適切に対処する方法から、底値買いの実践方法についてまでも学ぶことができる良書です。 - 小笹 俊一 -

「買うチカラ」とは

「買うチカラ」とは、お金(金融資産)でモノやサービスを手に入れる威力を指します。資産額が減っても、「買うチカラ」が維持できれば、生活に困らないような消費が可能です。一方、モノやサービスの価格が上昇するインフレーションは、数十年に一度くらいの頻度で発生します。

この現象によって、同じ1万円札でも、購入できる量や回数が大幅に減ってしまう場合があります。物価が上がり、お金の実質的な購買力が落ちることは、「買うチカラ」の低下を意味します。単にお金の数が増えても、今よりモノの価格が10倍、100倍になってしまうと、金融資産は紙くず同然です。そのため、資産運用において減らしてはいけないのが、「買うチカラ」です。

筋金入りの富裕層に学ぶ

そもそも資産運用は「増やす」ためではなく、「減らさない」ということを目的に、欧州の富裕層によって編み出されました。彼らは、長い歴史の中で、金融資産が紙くずになってしまう大変動を何度も経験してきました。その結果、「攻めて増やす」のではなく、「守りながら減らさない」ことに軸を置いた資産運用スタイルで危機を乗り越え、筋金入りの富裕層になったのです。

富裕層の話など、自分にはあまり関係ないと思う人もいるでしょう。しかし、日本で最も裕福な世代である「60代」は、「人生の富裕層」にあたります。60代は、親世代からの遺産相続や退職金など、ライフサイクルのなかで自然にお金が転がり込む時期です。一般的に70代になると給与などの収入がなくなるため、年金と60代までに形成した資産で暮らしていくことになります。保有資産のピークを迎える60代で、「増やす」資産運用を目指すのはリスクがあります。運用資金の規模にともなって損失が大きくなるためです。

スケールは異なりますが、老後を迎える世代は、「資産を築き上げた」筋金入りの富裕層たちと同じ状況に置かれています。富裕層が実践している「買うチカラ」を減らさない資産運用は、年金世代が真似るべき手段なのです。

「買うチカラ」を見極める

株価指数は、「買うチカラ」を正確に表してはいません。物価の動きを示す消費者物価指数を、名目株価指数が上回れば「買うチカラ」の上昇、下回れば「買うチカラ」の減少を意味します。つまり、「買うチカラ」を把握するには、名目株価指数を消費者物価指数で割った「実質株価指数」の動きをみる必要があります。

また、「買うチカラ」はインフレ率を基準としています。そのため、一般的な短期金利や長期国債リターンとの比較よりも、短期国債利回りなどをインフレ率にして比べることが重要です。インフレ率の状況に応じて投資スタイルを変化させることで、「買うチカラ」の減少を防ぐことができます。

「買うチカラ」を減らさないためには

「買うチカラ」を維持する資産運用のポイントは、経済環境(特にインフレ)の変化に応じて、資産配分のパターンを変更していくことです。コンドラチェフ・サイクルに沿って、下記の3つの期間にわけて対応していきましょう。

・インフレ率上昇期

・インフレ率低下期

・インフレ率安定期

インフレ率の上昇期から安定期まで、おおむね30年〜50年前後の間で循環するため、各期間は10年〜20年程度になります。それぞれの局面において、どのような資産運用が向いているのでしょうか。

インフレ率上昇期

インフレ率上昇期には、世間一般の物価を代表する消費者物価指数の上昇が目立ちます。また、原油や小麦など国際商品(コモディティ)や、債券利回りが上がるため、債券価格が下落します。

この時期、あらかじめ金利が決まっている債券投資は、買うチカラが減退するので避けましょう。しかし、物価指数の変動に応じて元本や利息が変動する「物価連動国債」であれば、物価上昇に強く、買うチカラを維持できます。

また、価格の上昇が期待できる「コモディティ投資(国際商品価格)」は、買うチカラの拡大を目指す人に適しています。ただし、コモディティ投資は変動率が大きいぶん、リスクが高い点には注意が必要です。また、原油や小麦といった嵩張る「モノ」には保管費用分のコストがかかることを覚えておきましょう。

インフレ率低下期

インフレ率が低下すれば、物価の上昇が緩やかになり、株式投資による「買うチカラ」の増加が期待できます。

低下期においては、人間の意志を介入させると株価指数の収益率に負けやすい傾向があるため、あえて銘柄選定せず、株価指数に連動するファンドを購入するのが向いています。コスト削減やリスク回避もできるうえ、運用報酬も抑えられるため有効です。

株式投資への比率を高くするとき、まず損失許容額を決めてから配分を変えるのがおすすめです。例えば、年金世代の場合、3ヵ月分の年金受給額などに置き換えて考えましょう。損失が生じても、自分が精神的なダメージを感じない水準に設定することが大切です。

インフレ率安定期

インフレ率安定期での最大のリスクは、「株価暴落」です。

この時期には、バブル崩壊と金融危機をともなうことがあり、デフレに陥る危険性もあります。デフレになると低金利が続くため、タンス預金でも「買うチカラ」が増加します。インフレ率上昇期や低下期と比べると、判断を誤りやすい時期なので、よく気をつけて対応しましょう。

どの企業の株式も総じて売却される「バーゲンハント」の時期もありますが、次の上昇期を目指して株式の比率を下げなければなりません。少しずつ、物価連動国債など「買うチカラ」の減退に強い金融商品へ移行しましょう。

資産運用で大切なのは「増やす」という目的ではなく、「将来的に使う目的で、買うチカラを減らさない」ことです。特に、インフレ率に対応しながら「買うチカラ」を維持するのは、安定した年金生活を過ごすために非常に重要です。長い歴史のなかで金融危機を乗り越えてきた、世界の富裕層の資産運用方法を参考に、自分の資産を守っていきましょう。

著者
平山 賢一
国際公認投資アナリスト。東京海上アセットマネジメント投信株式会社運用本部チーフストラテジスト。
出版社:
講談社
出版日:
2012/11/21

※Bibroの要約コンテンツは全て出版社の許諾を受けた上で掲載をしております。

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