初心者は大事な資金を投じる前に、株式投資とは何か、何が怖くて、どこに注意すればいいのかを押さえておきたい。そうすれば、なすべき行動が見えてくる。
株とは、株式会社の資本の構成単位で、その企業が発行する「出資証券」である。「出資証券」とは、その企業にお金を出したことを証明する文書のこと。株式を取得したことで株主となり、出資した金額に応じて間接的にその会社の経営に参加することができるのだ。
株は、公共の場である「株式市場」に流通させて手軽に取引できるようにしているということも特徴だ。
「株式投資」とは、「株という金融商品に自分の資金を差し出し、リスクを受け入れることで利益を得ることを目的とする行為」。株式投資によって直接的に得られるものは4つある。
(1)「配当金」を受け取れる
投資している株式会社がビジネス活動を通して創出した利益の一部を、株主は「配当金」として受け取ることができる。「配当金」は保有する株数に応じて口座に入金される。
(2)「株主優待」が得られる
「株主優待」とは株主への感謝の気持ちとして企業側が送るサービスや物品のこと。日本特有の心遣いから起因する制度といえる。
(3)「経営」に参加できる
株主は株主総会に参加して意志を表明することにより、その企業の経営に参加することができる。意思決定に与える影響度は保有する株数によって決まり、保有株数の多い株主ほど決定権が大きくなる。
(4)株の値上がりによる「売却益」を期待できる
株は買った値段よりも高いときに売れれば利益を得られる。株式投資の多くはこの「値段の変化による利益の獲得」を狙う。本書も主にここに焦点を当てて解説をする。
株式投資の間接的なメリットとして「関心分野が広がること」や「世界経済に興味を持つことでさらに視野が広がる」ということも挙げられる。経済についてよくわからない人こそ投資をはじめてほしい。経済的にも精神的にも豊かになっていく自分を感じられるだろう。
株価は、経済学の教科書では「需要と供給によって決定」といわれるが、実態は「投資家の心理」が需要と供給を動かしているのだ。
多くの投資家が上がりそうだと思った株は実際の業績などに関係なく上がることもあり、逆に多くの投資家が下がると思った株は業績がどれだけよくても下がっていく可能性もある。株価はこうした投資家の心理を反映した需給で決まる。
株は証券会社を通じて買う。株式売買のための口座を開設し、お金を入金して注文を出すことで株の売買を行う。証券会社の選び方には注文機能や手数料など色々な基準がある。大事なのは自分の目的と好みが何かを明確にしたうえで証券会社を選ぶことだ。
損をする投資家の多くは「常識といわれている誤った考えを実践している」。まずは「投資に関する正しい考え方」を理解しよう。
常識だと思われている代表的な3つのワナがある。
(1)成功している人に買うべき銘柄を聞く
買うべき「銘柄」を知ったところで、儲けることができない人が多い。「いつ買って、いつ売ればいいのか?」がわからないのだ。
(2)儲かっているから上がるだろう
利益の出ている会社の株価が必ず上がるとはかぎらない。なぜなら株価は「【1】事前予想に対する結果」と「【2】投資家が考えるトレンド」という投資家心理を反映するため。
「【1】事前予想に対する結果」とは、事前の予想に対して、実際の業績結果がそれを上回ったか下回ったかということ。たとえば市場予想で今期200億円の利益を達成すると思われていた会社が、実際には190億円の利益だったら、その利益がいくら立派でも予想に届かなかったという理由で株価は下落する。
また、市場予想よりも発表された業績が好調であったとしても、それまで株価がズルズルと下がりながら推移していたら、買いたいと思う投資家は増えず、株価が上がらないこともある。株価はこうした「【2】投資家が考えるトレンド」にも影響されるのである。
(3)安くなったら買い、高くなったら売る
これは最もよくいわれる投資の定石のようなものだが、投資のプロは「高くなったら買い、安くなったら売る」と真逆なのだ。彼らは株価の大きな流れ(トレンド)に乗って、トレンドに抵抗せず利益を取る。
「安くなったら買いとは、何を持って安くなったと決めるのか?」「高くなったら売るとは、どこまで行ったら高いと決めるのか?」。この2つの質問に答えられなければ、市場原理に従わず自分基準で投資を行っていることになる。
投資を考える際には、利益になる話だけではなく、「損失の可能性」と「その損失ですべてを失わないようにコントロールする方法」を覚えなければならない。投資の世界に絶対はなく、リスクについて正しく理解することが必要だ。
リスクと聞くと、多くの人が「損失になること」をイメージするだろう。しかし金融におけるリスクとは、不確実性という意味になる。損失であれ利益であれ、不確実なことが起こる可能性はリスクに含まれるのだ。つまり、「利益になること」もリスクと考えられる。
リスクが高いというのは損失になる可能性も高いけれど、それと同程度に利益になる可能性もあるということ。
それでは、下記2つのうちリスクが高いのはどちらだろうか?
(1)東京タワーから飛び降りてケガをする確率
(2)好きな女性に告白してつきあえる、またはフラれる確率
正解は(2)である。(1)の場合はケガをする確率はほぼ100%、ケガではすまないこともほぼ確実だろう。不確実性がほぼ「0」な状態はリスクがないのだ。
一方、(2)の確率はおよそ50%なのでまったく予測がつかない。こちらのほうが不確実性が高く、リスクが高いと評価できる。
投資の教科書でよく見られる「リスクコントロール」は損失と利益をどのように管理するかと考えられる。損失をなくすことに限った話ではない、ということは覚えておこう。
適切なタイミングで株を売買して利益をあげるのに必要なことは4つに集約される。4原則は投資戦略の土台となる。
(1)投資判断
「何を基準に投資を決めるのか」「買うのに最適なタイミングだと、何をもって判断するのか」という「投資判断基準」を持つこと。
(2)投資技術
決めた「投資判断基準」をもとにスムーズに行動に移すためには、注文方法やツールを理解し、使いこなすことも大切。
(3)株価の原理
「株価が波を打ちながら上がっていくこと、その波が大きくなったり小さくなったりすること」を株価の原理と呼ぶ。株価は業績や経済状況だけではなく、投資家の心理も反映され形作られる。
(4)投資家心理
株式投資の90%以上は投資家の心理戦だといわれている。投資家心理を理解することは、買う銘柄や売買のタイミングを見極める際にも活用できる。
これら「投資の4原則」に従い、テクニカル分析を用いて、買う銘柄を導き出す。
株式投資で利益をあげるためには「3つ」のポイントを押さえる。
(1)何を買うか?
いい会社の株を選ぶためにはファンダメンタル分析という企業分析が欠かせないといわれる。ファンダメンタル分析とは、企業の定量的な側面(利益や保有資産など数字で表せるもの)と経済が持つ定性的な側面(地政学的リスクや社会の情勢など)を組み合わせて、有望な投資先を見つける分析方法である。
(2)いつ買うか?
いい会社の株を選んだからと言っていつ買ってもいいわけではない。株価にはトレンドや波が存在し、それらをもとに買いや売りのタイミングを計ることができる。
買うタイミングさえわかってしまえば、極端な言い方をすると、会社の業績などを知らずとも、買う銘柄を選ぶこともできるのだ。
こうした売買のタイミングは後ほど紹介するテクニカル分析でも判断できる。
(3)いつ売るか?
保有する株を売るタイミングの見極めは本当に難しい。いつ売るかを分析することもテクニカル分析の領域である。また、感情に左右されて、判断に迷いが出ないように初めから売るタイミングの設定をすることも重要である。
ファンダメンタル分析もテクニカル分析もどちらも素晴らしい分析方法なので、投資で利益を得るためにはどちらの分析手法も覚えておくといいだろう。
株式投資に対するアプローチには以下の2種類がある。
(1)いい会社を選んで(ファンダメンタル分析)から、売買のタイミングを決める(テクニカル分析)
(2)すぐ買える銘柄と売りのタイミングを決め(テクニカル分析)、いい会社を絞り込む(ファンダメンタル分析)
資金的、時間的余裕があれば(1)のアプローチを、少ない資金で効率的に資産を増やしたいなら(2)のアプローチをとるなど、自分の状況にあわせたアプローチを取るようにしよう。
本書では(2)のアプローチにしたがった投資理論の実践方法を紹介していく。
テクニカル分析は「チャート」を用いる。チャートとは、横軸には時間の経過、縦には価格の推移を置くことで時間の流れによって価格がどのように変化したのかを表すグラフ。
チャートを見る上で必要な基礎知識を3点押さえよう。
(1)チャートの時間軸
チャートは、「日足」「分足」「週足」「月足」と表示する時間軸によって、見方を変えられる。
(2)ローソク足
チャート上に白や黒などで表示される縦長の棒状のものをローソク足と呼ぶ。
ローソク足は、その期間のうちに株価がどのように動いたかを示すもので、チャートの時間軸が日足なら、1本1本のローソク足は1日分の価格変動を表し、週足なら1本のローソク足は1週間分の価格変動を表す。
ローソク足の棒状の部分を「実体」と呼び、ローソク足の実体の上下に延びている線を「ひげ」と呼ぶ。。
(3) テクニカル指標
テクニカル指標は過去の価格推移の傾向をもとにしたツール。チャートにも表示できるため、過去から現在までの値動きの傾向をビジュアルでチェックできる。
代表的なテクニカル指標の1つに「移動平均線」がある。移動平均線は、一定期間の終値(その日に最後に付いた価格)の平均値で、チャート上に表示すればトレンドを判断するときに役立つ。
ローソク足1本1ほんの動きにこだわりすぎないように、大きな流れを把握することが移動平均線の正しい使い方。
本書で紹介する株式投資は「上昇のトレンドが発生するときに買って、トレンドが終わることを確認して利益を確定する方法」を目指す。
具体的に買う銘柄をどう探せばいいのか、いつ銘柄を購入すればいいのか、の具体例を以下で見ていこう。
買う銘柄を探す基準は「上昇のトレンドが発生しそう」という点。
「上昇のトレンドが発生するとき」を判断するには、75日移動平均線を使う。75日移動平均線は直近2~3カ月間の価格推移を表しており、75日移動平均線が上向いていれば株価は上昇傾向、下向いていれば株価は下落傾向にある、といえる。
つまり、上昇のトレンドが発生しそうな「75日移動平均線が上向く」銘柄を選ぶのだ。これが「投資の4原則を理解しよう」でも紹介した「投資判断基準」にあたる。
先ほどの「投資判断基準」を満たした銘柄を買うタイミングは、利益を最大化できる「上昇のトレンドが発生しそうなとき」が理想的。
そのタイミングの判断材料のひとつとして考えられるのが、「75日移動平均線が上向き、その移動平均線を株価が下から上に抜けるとき」。
75日移動平均線が上向き、株価が移動平均線の上で推移していくようになれば、今後も株価は上に向かって膨らんでいくことが期待できるのだ。
安くなったら買うという常識を捨て、「株価が高くなって上昇の勢いが確認できたら買う」というプロも行うような行動を目指したい。
買った銘柄をいくらで売るか。これも75日移動平均線を目安として、「75日移動平均線が上から下に抜けるところ」の価格で売る。
たとえば、75日移動平均線が1000円で推移していたとき、株価が移動平均線を上抜け、とある銘柄の株を1025円で買ったとする。
このケースでは売る価格は、「75日移動平均線の価格1000円を上から下抜けるところ」なので、999円となる。
「いくらで売るか」の設定は、株を買うときに行うこと。もし、買ったときより株価が下がったとしても、売る価格を予め設定しておけば、損失を限定することができる。
それでは利益が乗っているときにはどうするか?
先ほどの1025円で株を買ったケースを例に考えると、株価が想定したとおり1200円、1500円、2000円…と上昇すれば、75日移動平均線も1100円、1400円、1800円などと株価よりも少し下で同じように上昇していく。
移動平均線の上昇にあわせて、売る価格も引き上げれば、利益を確定する設定となるのだ。
本書で取る投資のアプローチ方法は、「テクニカル分析でタイミングを見極めたうえで、ファンダメンタル分析で絞り込む」というスタンスだ。
しかしファンダメンタル分析は奥深く、すべてを網羅するのは到底不可能なので、まずは以下の必要最低限の項目をチェックすることに集中しよう。
(1)割高になっていないか?
すでに人気が出て、不必要に値段が高くなっている銘柄を買うことは避けたい。銘柄の割安性は、「PER(株価収益率)」を確認する。株価÷1株あたり利益で算出され、PERが低ければ割安と判断できる。
(2)しっかり稼いでくれるか?
気になる企業が今後も稼ぎ続ける能力があるのか、は銘柄選びの重要なポイント。将来も稼いでくれるかを見るには、「予想増収率」に注目しよう。将来にどれだけ利益が増えるかを表す数字で、競合他社と比較して予想増収率が高い銘柄なら、他の投資家からも買われやすくなる。
(3)借金がなく安定しているか?
今年の業績が好調でも、その業績に見合わないほど借金を多く抱えていたら、安定的な経営とはいえず、株を買うのも不安になる。会社の安定性をチェックするときは、「PBR(株価純資産倍率)」を参考にする。株価÷1株あたり株主資本で算出され、「1」以下なら会社に安定性があると思われ、投資家から注目を集めやすくなる。
(4)配当などをしっかりくれるか?
配当などが手厚い企業は投資家に好まれ、その企業の株は買われやすくなる。株主をどれだけ優遇しているかは、「配当利回り(株価に対し、1年間でどれだけの配当を受け取ることができるか、その利回りを示す数値)」を確認。同じ条件ならば株主を優待している企業が投資家には好まれやすい。
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